| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PB-189  (Poster presentation)

固有樹種シコクシラベの石鎚山集団における9年間の球果着生量と4年間の雄花着生量
Changes in the cone and male-flower productions in the Mt. Ishiduchi population of Abies veitchii var. shikokiana

*岩泉正和, 三浦真弘, 篠﨑夕子, 林田修, 山本あゆみ, 河合貴之, 加藤智子, 片岡彰, 竹原正人(森林総研林育セ関西)
*Masakazu G. IWAIZUMI, Masahiro MIURA, Yuko SHINOZAKI, Osamu HAYASHIDA, Ayumi YAMAMOTO, Takayuki KAWAI, Tomoko KATO, Akira KATAOKA, Masato TAKEHARA(FTBC, FFPRI Kansai)

シコクシラベ(Abies veitchii var. shikokiana)は四国の石鎚山、笹ヶ峰および剣山のわずか3山の頂上周辺にのみ遺存的に生育するシラビソの固有変種であるが、気候変動などによる集団サイズの減少が危惧されており、生息域内外での保存が重要視されている。これまで当該樹種3集団の遺伝的変異が明らかにされ(岩泉ら 2016;森林遺伝育種 5: 172-179)、結実個体(母樹)を対象とした次世代(種子)の遺伝的多様性の解析が行われているが(岩泉ら 2018;前々回大会)、現地内での天然更新や種子による生息域外保存等に重要な、球果生産量や結実の豊凶周期についてはあまり知見がない。また、種子の遺伝的多様性(花粉親の多様性)の高い採種母樹の検討を行うなどの上では、花粉生産量の年次変動に関するデータも同時に重要である。本研究では、石鎚山のシコクシラベ集団を対象に111個体をランダムに選定し、2011年~2019年の9ヵ年にわたり球果着生量(個数)を、また2016年~2019年の4ヶ年では雄花着生量(5段階で指数評価)を連年調査するとともに、両者の年次変動パターンや個体間差等について解析した。
その結果、個体あたりの平均球果着生量は2011年(44.0個)、2014年(55.0個)、2017年(24.4個)、2018年(19.0個)で多く、結実の豊作年と考えられた。それ以外の年では、球果の着生は少なかった(平均0.0~6.8個)。一方で、雄花着生指数の年次変動は球果着生量に比べると小さいが、結実の豊作年であった2017年、2018年でいずれも多く(平均1.95~2.54)、その他の年は少なかった(平均1.53~1.62)。また、個体の球果着生量には個体サイズ(胸高直径)との一貫した相関関係は見られなかったが、雄花着生指数は、いずれの年においても個体サイズと有意な正の相関が認められた。


日本生態学会