| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-199  (Poster presentation)

Evaluation of ecosystem function by long-term climate data 【B】

*Aki HOSHINO(MEISEI Univ.), Takanori HANADA(MEISEI Univ.), Kei YOSHIMURA(The University of Tokyo), Satoru SHOJI(Toshiba Electronics Eng. Corp.)

これまで、気候変動に対する地球規模の生態系の脆弱性は、短期の気象データと短期の植生データなどを用い、『Exposure』(被害を受けるリスク)、『Sensitivity』(気候変動に対する植物の敏感性)『Resilice』(自然の生態システムの回復力)の3つの要素から統合評価されてきた。しかしながら、生態系は長期にわたる気候を始めとする環境要素の影響をうけて成立している。そのため、長期の気象データから気象環境と植生との関係性を推定することによって、本来の植物生態系の気象条件への応答を把握することができると考えられる。
そこで、本研究では、長期間の気象情報850年~2000年の3つの異なる長期気象データセット(気温、降水量、蒸発量:東京大学 生産技術研究所 人間・社会部門 同位体気象学芳村研究室提供)と植生指数(NDVI:Twenty-year Global 4-minute AVHRR NDVI Dataset of Chiba University)に関する衛星データを利用した。長期気象データとNDVIの変動係数をそれぞれ算出し、その相関の有無を、相関係数や決定係数、相関図から調べた。
ほとんどの土地被覆において、気象とNDVIの変動との関係は、気象の変動が小さくなるとNDVIの変動のばらつきが大きくなり、気象の変動が大きくなるとNDVIの変動のばらつきが小さくなる傾向にあった。また、気象の変動とNDVIの変動が両方とも大きいところはなかった。
NDVIは年間最大値を利用しているため、その変動は年生産量のばらつきを表していると考えられる。降水量の変動が高いにも関わらず、NDVIの変動が低い地域というのは、長期にわたって気候変動に曝されるうちに、生態系がその環境に適応した、気候変動に対する脆弱性が低い地域だと考えられる。逆に、気象の変動の影響に関係なく、NDVIの変動が大きい地域(開けた灌木林)は、気象条件の変動に対して、NDVIが収束しておらず、気候変動に対する脆弱性の高い地域と考えられた。


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