| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-259  (Poster presentation)

Estimating intra- and interspecific gene flow of Hemerocallis in Far East Asia

*Shun K. HIROTA(Tohoku Univ.), Pavel KRESTOV(Bot. Garden-Inst. FEB RAS), Irina KRESTOVA(Bot. Garden-Inst. FEB RAS), Kuchina VALENTINA(Bot. Garden-Inst. FEB RAS), Kozue NITTA(Azabu Univ.), Akiko A YASUMOTO(Univ. of Zurich), Koh NAKAMURA(Hokkaido Univ.), Tetsukazu YAHARA(Kyushu Univ.), Yoshihisa SUYAMA(Tohoku Univ.)

種分化において、生殖隔離の進化は重要な要素のひとつである。キスゲ属では昼咲種と夜咲種が進化しているが、両者は相互に交配可能であり、開花時間が生殖隔離をもたらしていると考えられる。しかし、昼咲種と夜咲種間の自然雑種集団が見られるため、両者間で遺伝子流動が生じている可能性がある。この可能性を検証するために、キスゲ属の夜咲種Hemerocallis lilioasphodelusH. minor、昼咲種H. middendorffiiとそれらの雑種集団を対象に、ゲノムワイドSNPに基づいて集団間分化レベルを解析した。
ロシア プリモルスク地方における分布調査の結果、夜咲きの2種は同所的にも生育していた。夜咲種と昼咲種が同所的に生育する地点は見られなかったものの、それらの推定雑種集団が4地点で見つかった。STRUCTURE解析の結果、夜咲種と昼咲種という2つのクラスターに分かれ、夜咲種と昼咲種の推定雑種は両方の要素を持っていた。mutual k-nearest neighbor graphsに基づく集団ネットワーク解析の結果、夜咲種と昼咲種、両者の雑種という3つのコミュニティに分かれ、コミュニティ内では各集団が網目状に結びついたネットワーク構造を示した。さらに、夜咲種と昼咲種それぞれの分類群内では集団間の有意なIsolation by distanceが検出されたものの、開花形質の異なる分類群間では有意なIsolation by distanceはみられなかった。これらの結果から、夜咲種と昼咲種の間で明瞭な遺伝的分化が維持されており、それらの雑種集団はほぼ集団内で交配していることが示唆された。
一方、すべての解析において、ともに夜咲きであるH. lilioasphodelusH. minorの間で有意な遺伝的分化は検出されなかった。さらに、H. lilioasphodelusH. minorの間では有意なIsolation by distanceが検出されたため、この2種間では広範囲な遺伝子流動が生じていると考えられる。


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