| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-288  (Poster presentation)

生育緯度と生活型が真正双子葉類の種分化率と絶滅率に与える影響
The effects of latitude and life-forms on speciation and extinction rate of Eudicots

*香取拓郎(東北大学・生命), 小黒芳生(森林総合研究所), 河田雅圭(東北大学・生命)
*Takuro KATORI(Tohoku University), Michio OGURO(FFPRI), Masakado KAWATA(Tohoku University)

生物種の多様性と分布は、「種分化、絶滅、分布拡大」などの現象によって形成されている。そして、これら3つの現象は、気候や地形などの非生物要因からの影響を受けており、この因果関係は動物と植物の多くの系統において研究されてきた。例えばユキノシタ目(被子植物)では、木本より草本のほうが種分化率と絶滅率が高い傾向が検出された一方、被子植物の別の研究では気候(緯度)が種分化率と絶滅率に与える影響は検出されなかった。しかし、被子植物の生活型データと生育緯度データの両方を説明変数として用い、生活型と生育緯度がそれぞれ持つ種分化率と絶滅率への影響を独立に検証したり、生活型と生育緯度の組み合わせの影響を検証した研究はない。そこで本研究では、被子植物の種分化率と絶滅率に対して、生育緯度と生活型のそれぞれが与える影響、および生育緯度と生活型の組み合わせによる影響の存在を検証した。対象としたのは被子植物の真正双子葉類から選んだ17分類群(目または科)である。生活型の影響をみると、絶滅率は草本より木本で有意に高かったが、種分化率への影響は検出されなかった。また、生育緯度の影響をみると、低緯度木本より高緯度木本で絶滅率が有意に高かったが、種分化率への影響は検出されなかった。生活型を区別せずに生育緯度の影響を検証した過去の研究では、生育緯度が種分化率や絶滅率へ与える影響は検出されなかったが、本研究では木本の絶滅率に限り生育緯度による影響が検出され、木本は高緯度で絶滅が起こりやすいことが分かった。高緯度における気候の年較差または年代変動の大きさに対して、木本は適応的な生活型でない可能性が示唆された。


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