| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-299  (Poster presentation)

1万個の人工生態系をつくり生態系ダイナミクスの理解に挑む
Toward understanding ecosystem dynamics by creating 10,000 synthetic ecosystems.

*細田一史(大阪大学), 村上なおみ(大阪大学), 瀬尾茂人(大阪大学), 長田穣(東北大学), 松田秀雄(大阪大学), 古澤力(東京大学, 理化学研究所), 近藤倫生(東北大学)
*Kazufumi HOSODA(Osaka univ.), Naomi MURAKAMI(Osaka univ.), Shigeto SENO(Osaka univ.), Yutaka OSADA(Tohoku univ.), Hideo MATSUDA(Osaka univ.), Chikara FURUSAWA(Tokyo univ., Riken), Michio KONDOH(Tohoku univ.)

生態系は様々な生物の相互作用をもち常に変化しながらも、ある程度安定に存在できる複雑なシステムである。どのように変化し、どのように保たれているのか。その原理には、琵琶湖でもアマゾンでも腸内フローラでも、本質的な共通点があるだろう。この共通原理の解明のためには、安定な系から天然では存在すらできない不安定な系まで、様々な系を試験し観察できる実験生態系が強力なツールとなる。しかしこれまで、単離・凍結保存が可能な生物のみから構成され、5種以上の多様性をもって生産者・消費者・分解者(以下、3役)を含み、大量の系を扱える実験系はいままでなかった。本研究では、3役を含み、全て単離・凍結保存が可能な12種の生物を用いて、同時に1万個程度の系を試験できる実験系を構築した。このうち、完全に閉じた系、および、定期的な流入出がある開いた系の両方で、半年以上の間、3役を含む5種以上が存在できる安定な系が存在した。この中には、2種では現れない振動パターンなど、複雑な現象が観察される系もあった。また、キーストーン種をもつ生態系もあり、そのメカニズムも明らかにできた。以上のように、生態系の複雑な現象を再現でき、シミュレーションのように大量の系を調べられる実験プラットフォームが確立された。今後は、生態系の変化や安定性の原理解明、温度など外部環境変化による生態系変化の理解・予測・制御、各生物や生物内の分子から生態系全体を繋ぐ全体の理解など様々な目的において、理論と天然をつなぐプラットフォームとして生態学の進展に貢献するだろう。


日本生態学会