| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-310  (Poster presentation)

流入支川に残存する霞ヶ浦流域の水生植物の現状
The current status of Aquatic plants at Lake Kasumigaura's tributary rivers

*槐ちがや, 中村圭吾(土木研究所河川生態)
*Chigaya ENJU, Keigo NAKAMURA(PWRI River Restoration)

茨城県霞ヶ浦(本研究では西浦のみを対象としている。)の在来の水生植物種数(抽水植物を除く)は1970年代に平均31種を記録したが、その後種数は減少し続け、2010年代には8種まで減少した。特に沈水植物についてはこれまでに合計で43種記録されたが、現在の西浦ではほとんど見られない。しかし、過去10年に断続的に行われた調査から、いくつかの流入支川において沈水植物が残存していることがわかった。本研究においては西浦の水生植物の再生を目的として、それに必要となる西浦の流入支川における沈水植物資源量とその生育環境の把握を行った。
本研究では2008年8月に植生調査が行われた5つの流入支川の地点と重なるように調査区を設定した。調査は2019年7月23日~26日に行った。各調査区において1×1mのコドラートを一時的に設置し、コドラート内に出現したすべての沈水植物を対象とした植生調査と環境要因調査(流速や水深など)を行った。
調査の結果、2008年に出現したナガエミクリおよびヒルムシロが流入支川から消失した一方で、2008年に出現しなかったオオカナダモやオオフサモが新たに出現した。出現した沈水植物の中で2008年もしくは2019年に3か所以上出現した種を対象として、比較した結果、6種のうち5種が出現地点数および平均被度において減少した。さらに2019年に出現した種のうちササバモとオオカナダモについて在不在における環境要因を比較したところ、水面幅ではそれらの在不在に差はなかったが、底質の砂の割合が多い場所でササバモ、少ない場所にはオオカナダモが存在した。
 本研究より、西浦の流入支川に生育する沈水植物はオオカナダモを除き過去10年で減少していることが明らかになり、西浦内のみならず流入支川においても沈水植物が減少していることが分かった。そのため、流入支川を含めた流域スケールでの在来の沈水植物の保全を行う必要性があると考えられた。


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