| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-312  (Poster presentation)

地生態学に基づいた愛知県のエコリージョン区分図の作成とその活用
Developing Ecoregion maps based on Geoecology in Aichi prefecture.

*増澤直, 宮本渉, 根岸理佳子, 今野尚美, 安藤裕子((株)地域環境計画)
*Tadashi MASUZAWA, Sho MIYAMOTO, Rikako NEGISHI, Naomi KONNO, Yuko ANDO(Regional Environmental Plannin)

 エコリージョンとはひとまとまりの類似した生態系を持つ地理的区分(Omernik & Bailey, 1997)を指す。米国では、自然保護庁(EPA)によって大陸スケールのレベルⅠから各州スケールのレベルⅣまで整備されているのが知られ、入れ子の階層性をもつのが特徴である。
 エコリージョン区分図は自然景観や生態系の構成要素(地形、地質、土壌、植生など)の成り立ちや空間分布に基づき、地生態学的なまとまりのあるユニットを見つけ出して地域区分を行う。区分された各エコリージョンは、その土地のもつ自然特性が地域区分に反映されていることから、国や都道府県などの広域的な生物多様性や生態系の管理単位として有効である。今回のエコリージョン区分図は、愛知県を対象とし、既存の地形分類図、地質図、土壌図、現存植生図、気象データ、動植物分布情報等を活用して作成したものである。
 愛知県では「あいち生物多様性戦略2020」により、土地の所有者や利用者が連携して、地域本来の生きもののための場所を確保し、つなげていく「生態系ネットワーク」と、開発等による自然の保全と再生、ネットワーク形成をすすめる「あいちミティゲーション」からなる「あいち方式」による生物多様性の保全と活用を推進してきた。一方で、身近な里地などの従来の保全の網から抜け落ちてしまいがちな貴重な自然や、県民が昔から大切にしている自然などの具体的な「場」の「見える化」は十分ではなく、たとえば、脆弱なために早急に保全対策が必要な場所がどこにどれくらいあるのか、自然再生によって高い保全効果が得られる場所はどこか、などの地理的分布をまず明らかにする必要がある。
 今回のエコリージョン区分図は、愛知県が2020年度に予定する地域戦略改定にあわせて作成し、動植物等分布図や法令等による保全指定地総括図や、伝え残すべき重要な自然の分布などとともにアトラスとして整備され、今後の生物多様性保全管理の戦略図として活用が期待される。


日本生態学会