| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-325  (Poster presentation)

津波撹乱後の8年:東北沿岸域の干潟ベントス群集は回復しているのか?
Eight years after the Tsunamis:have the benthic communities in tidal flats of Sendai Bay returned to their original states?

*柚原剛(東北大学・院・生命), 鈴木孝男(みちのくベントス研), 占部城太郎(東北大学・院・生命)
*Takeshi YUHARA(Tohoku Univ.), Takao SUZUKI(Michinoku Res. Isnt. Benthos), Jotaro URABE(Tohoku Univ.)

仙台湾沿岸には多くの干潟が存在し,それぞれ特有のベントス群集を形成している.それら干潟生態系のベントス群集は,2011年3月に発生した東日本大震災とそれに伴う津波により撹乱を受けた.その撹乱の程度は干潟により異なり,浸水高が高かった干潟ほど震災直後のベントス出現タクサ数は減少し,震災前後での群集構造は大きく変化した.本報告では,震災後の干潟生物群集の回復状況について紹介する.調査は,仙台湾で津波影響が大きかった仙台市の蒲生干潟内の2地点,亘理町の鳥の海2地点,福島県相馬市の松川浦鵜の尾,および津波影響が小さかった宮城県塩竈市の桂島,利府町の櫃ヶ浦,松島町の双観山下の計8地点で行った.各干潟について震災前と震災が発生した2011年,その後2012年から2019年の計10回のセンサス調査を行い,出現タクサ数を調べた.
 各干潟の出現タクサ数は,津波の影響震災直後の2011年には浸水高の高い干潟で大幅に減少したが(範囲:16~57タクサ),震災後1~2年間で出現タクサ数は増加し,2013年に震災前より増加し最大値を示した(範囲:28~59タクサ).翌2014年に全ての地点で出現タクサ数は減少し(範囲:22~52タクサ),震災前のタクサ数(範囲:27~47タクサ)とほぼ同程度となった.その後出現タクサ数は2019年にかけて漸増し,2013年の最大値出現タクサ数となっている(範囲:28~62タクサ).仙台湾沿岸でのベントス出現タクサ数の経年変化をみると,ベントス群集は2013年頃より順調に回復し,その状態が維持されていた.本発表では,これら出現タクサ数に加えて種組成および各干潟での各種出現パターンから,干潟におけるベントス群集の構造決定機構の特徴と震災後の変動・回復過程について議論する.


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