| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-335  (Poster presentation)

市民参加型調査で集めた位置情報付き生物写真にデータバイアスは存在するか?
Is there data bias in biological photos with location information collected in a citizen participatory research?

*佐橋玄記(SWSP, 水研機構・北水研), 丸山緑(SWSP, 明治コンサルタント), 有賀望(SWSP, 豊平川さけ科学館), 森田健太郎(SWSP, 水研機構・北水研), 岡本康寿(SWSP, 豊平川さけ科学館), 向井徹(SWSP, 北海道魚類映画社), 水本寛基(SWSP, 北海道大学), 植田和俊(SWSP, パブリックコンサル), 藤井和也(SWSP, 福田水文センター), 渡辺恵三(SWSP, 北海道技術コンサル), 大熊一正(SWSP, 水研機構・北水研), 荒木仁志(SWSP, 北海道大学)
*Genki SAHASHI(Sapporo Wild Salmon Project, Hokkaido Ntl. Fish. Res. Inst.), Midori MARUYAMA(Sapporo Wild Salmon Project, Meiji Consultant Co., LTD.), Nozomi ARUGA(Sapporo Wild Salmon Project, Sapporo Salmon Museum), Kentaro MORITA(Sapporo Wild Salmon Project, Hokkaido Ntl. Fish. Res. Inst.), Michitoshi OKAMOTO(Sapporo Wild Salmon Project, Sapporo Salmon Museum), Toru MUKAI(Sapporo Wild Salmon Project, Hokkaido Fish Films), Hiroki MIZUMOTO(Sapporo Wild Salmon Project, Hokkaido Univ.), Kazutoshi UEDA(Sapporo Wild Salmon Project, Public Consultant Co., LTD.), Kazuya FUJII(Sapporo Wild Salmon Project, Fukuda Hydro. Cnt. Co., LTD.), Keizo WATANABE(Sapporo Wild Salmon Project, Hokkaido Gijutsu CN Co., LTD.), Kazumasa OHKUMA(Sapporo Wild Salmon Project, Hokkaido Ntl. Fish. Res. Inst.), Hitoshi ARAKI(Sapporo Wild Salmon Project, Hokkaido Univ.)

市民参加型の調査の中でも近年特に増えているのが、位置情報を付与した生物のデジタル写真を市民から集める取組みである。この取組みでは、投稿写真を基に専門家が種同定を行うことができるため、生物に詳しくない市民でも気軽に参加できることに加え、専門家だけでは把握の難しい、広域かつ詳細な生物分布情報が得られる。一方で、市民が投稿する写真データにどのようなバイアスが存在するのか、その客観的評価が行われている事例は少ない。札幌ワイルドサーモンプロジェクト(SWSP)で実施した「みんなでサケさがそ!」という企画においても市民投稿写真を基に広域生物分布データの収集を行ったが、この中には一定数の専門家によるデータが含まれていた。そこで、本研究では「みんなでサケさがそ!」に集まった市民と専門家の4年分のデータを比較することで、市民参加型調査で集めた位置情報付き生物写真を取扱う上で生じうる被写体と撮影場所、撮影時期に関するバイアスについて検討を行った。解析の結果、被写体に応じた統計的に有意なバイアスは検出されなかった。一方、市民の投稿写真は撮影しやすい橋の付近に集中する、という撮影場所のバイアスが検出された。更に専門家の撮影時期がサケ科魚類の遡上初期や終期を含め網羅的であったのに対し、市民は撮影時期が遡上最盛期に集中する、という傾向も見られた。今後はデータバイアスが生じうることを念頭に、市民から得られたビッグデータをどのように補正・取捨選択すれば、実際の研究や保全戦略に最大限活用できるのか、考えていく必要があるだろう。


日本生態学会