| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-350  (Poster presentation)

機械学習によるシマフクロウの音声個体識別法の検討
A study of vocal identification of individual Blakiston's Fish Owls using a machine learning.

森竹祐, 大坂生哉人, *森さやか(酪農学園大学)
Tasuku MORITAKE, Hayato OSAKA, *Sayaka MORI(Rakuno Gakuen Univ.)

シマフクロウ(Ketupa blakistoni)は,国内では北海道東部に約160個体が生息する絶滅危惧IA類である.個体群の保全管理のために足環による個体識別とモニタリング調査が長年続けられているが,捕獲は容易ではなく,野外での個体や足環の直接観察も難しい.ただし,求愛や縄張り宣言のために雌雄が繁殖期に頻繁に鳴き交わす声は遠方まで聞こえるため,音声による個体識別法の確立が期待されている.1990年代後半の研究で,本種の雌雄の音声は周波数の差で識別でき,同性個体間でも5~6個の周波数変数を用いた判別分析により,雄は84.3%,雌は88.4%の個体識別が可能だと報告されている.現在では当時よりも音声の解析技術やデータ分類手法が格段に向上している.そこで本研究では,測定の再現性の高い音声変数をより多く採用し,機械学習のランダムフォレスト法を用いることによって,シマフクロウの音声による個体識別法を改善することを目的とした.本研究では,野生下と飼育下の雄13個体と雌8個体の各35声(ただし雌雄各1個体は30声)を用いて,周波数と持続時間に関する雌雄各14変数に基づいた個体識別モデルを作成した.高い正答率を得るのに必要な学習音声数を検討するため,モデルの学習データを10~25声まで5声ずつ増やし,各個体10声の学習データとは異なる音声を試験データとして識別させた(ただし雌雄各1個体で試験データが5声の場合あり).各条件のモデルを10回ずつ試験したところ,学習データが10声でも雌雄とも平均98%以上の非常に高い正答率が得られることがわかった.ただし,ある個体を学習モデルから除き,その個体の音声を試験データとして識別させると,雄5個体と雌4個体では高確率で別の特定個体に識別されてしまい,正答個体が含まれるモデルで正しく識別された結果との区別がつかなかった.今後はその問題の解決が課題である.


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