| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-378  (Poster presentation)

福島県内に生息するイノシシ の個体群構造
Population structure of wild boar in Fukushima Prefecture

*斎藤梨絵(福島県), 根本唯(福島県), 熊田礼子(福島県), 今藤夏子(国立環境研究所), 玉置雅紀(国立環境研究所)
*Rie SAITO(Fukushima Prefecture), Yui NEMOTO(Fukushima Prefecture), Reiko KUMADA(Fukushima Prefecture), Natsuko KONDO(NIES), Masanori TAMAOKI(NIES)

東京電力福島第一原子力発電所事故後、帰還困難区域や居住制限区域内において、長期間の無居住化が生じたことで、生物の個体群に変化が生じていると考えられる。とりわけ、このような地域におけるイノシシの個体数の増加や、他地域への分散が懸念されている。イノシシは、農業被害をもたらす害獣であることから、鳥獣保護管理法の下で捕獲が強化されている種である。適切なイノシシの管理には、帰還困難区域等の地域も含めた福島県内におけるイノシシの個体群構造を把握することが必要である。本研究では、福島県内に生息するイノシシについてDNA解析を行うことでその個体群構造を明らかにすることを目的とした。福島県(179頭)及び熊本県(9頭)より採取したイノシシ計188頭のDNAに対してMIG-seq解析を行い、遺伝的構造を明らかにするためのマーカーとしてゲノムワイドにSNP(Single Nucleotide Polymorphism)の探索を行った。その結果、688座のSNPsが抽出された。これらのSNPs情報を用いて、Structure解析及びクラスター解析を行ったところ、対数尤度の変化率(ΔK)より、福島県のイノシシは相双、いわき、県南地方に生息するグループ(東側集団)及び県北、県中、会津、南会津地方に生息するグループ(西側集団)の2つのクラスターに分かれることが明らかになった。また、熊本県のイノシシは西側集団に近い系統であることが明らかになった。さらに2系統の地理的な分布を詳細に調べた結果、イノシシはおおよそ阿武隈川を境界とする県の西側と東側との間で移動が制限されていることが明らかとなった。


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