| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-396  (Poster presentation)

ヤギ除草における採食及び排泄が植生構造に与える影響
Effects of defoliation and urine deposition on vegetation structure in weeding by goats

*花岡凌太, 大黒俊哉(東大・農)
*Ryota HANAOKA, Toshiya OKURO(The University of Tokyo)

近年、環境負荷や人的労力等に配慮した除草手法として草食家畜の活用が注目されている。草食家畜の行動は主に採食・移動(踏圧)・排泄からなり、これらの要因が複合的に作用しながら植生に影響を与える。本研究では、家畜行動と植生との関係に関する知見が不足しているヤギを対象に、その採食及び排泄が植生構造に与える影響を検討することを目的とし、放牧を模擬的に再現する野外操作実験を行った。東京大学附属牧場(茨城県笠間市)内のヤギ放飼場の一画に禁牧区を作成し、放牧の再現処理を行った。処理は、園芸用はさみによる刈取りと、窒素・リン・カリウムを液肥で供給する施肥で、刈取り高度・刈取り頻度・施肥量に段階を設定した。これらの単一または組み合わせ処理を2019年8月から10月まで行い、禁牧区および放牧区において、2019年7月から10月まで毎月植生調査を実施した。処理による植生量への影響を一般化線形モデル(GLM)、季節的な植生変動について主成分分析(PCA)、処理による植生への影響について冗長分析(RDA)を用いて解析した。その結果、乾重を応答変数、各処理項目を説明変数としたGLM解析では、刈取り高度が負の影響、刈取り頻度が正の影響を与えることを示した(P<0.05)。PCAによる序列化では、第1軸について月ごとにプロット群が分かれ、季節による変動を示した。RDAの結果、刈取り高度、刈取り頻度、高度と頻度の交互作用、頻度と施肥の交互作用が有意に植生を傾向づける処理になることが示された(P<0.01)。また、これらの処理項目は。地際刈り区および放牧区と相関を示し、植物機能群については分枝型やセミロゼット型など草高が低くなるタイプと相関を示した。以上より、ヤギ放牧において植生構造により大きな影響を与える要因は、採食(刈取り)であり、地際刈りに近い除去能力を有することが示唆された。また、排泄による施肥効果は、採食と組み合わせることで発現する可能性が示された。


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