| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-405  (Poster presentation)

世界自然遺産白神山地における地域住民の認識と行動
Local Community's Recognition and Behavior in the Shirakami-Sanchi Natural World Heritage

*外崎杏由子, 吉田正人(筑波大学)
*Ayuko TONOSAKI, Masahito YOSHIDA(University of Tsukuba)

 世界遺産委員会では2007年にコミュニティの役割の重要性を採択し、世界遺産管理において地域住民の声を反映していくことを求めている。1993年に世界遺産に登録された白神山地では、入山規制問題を中心に議論がなされてきたが、その後、世界遺産と地域住民の関係について十分な議論が尽くされているとはいえない。本研究は世界遺産における地域住民と遺産との関係に焦点を絞り、白神山地を事例に世界遺産登録が地域住民の認識と行動にどう関わっているのかを、アンケート調査とそれに伴う聞き取りによって明らかにした。調査は2017年3月に、白神山地世界遺産登録地域を有する青森県西津軽郡鰺ヶ沢町と同県中津軽郡西目屋村の2町村の地域住民130名を対象として、対面インタビュー形式でアンケートを実施した。
 その結果、地域住民は白神山地に対して、親近感、誇りなどの意識は高いものの、白神山地に実際に足を運ぶ行動は低いことがわかった。また世界遺産登録によって、意識や行動の大きな変化はみられなかった。さらに聞き取り結果では、山の素晴らしさ、自然の当たり前さが暮らしの中で受け取られている一方で、観光地化によって山や自然が荒らされていることを心配する声が寄せられた。加えて、自然環境を大事にし、世界遺産として白神山地を存続させたい声が多くあった中で、子供たちの白神山地に対する興味関心が薄れ、伝えたいこともないという声が寄せられた。したがって、コミュニティの役割は、今後の白神山地の世界遺産保全活用を考える上での重要な課題として考えられる。


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