| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-414  (Poster presentation)

琵琶湖・淀川水系におけるチャネルキャットフィッシュの現状:市民科学による情報収集
Citizen-based monitoring of non-native channel catfish in the Lake Biwa-Yodo River system

*吉田誠(国環研琵琶湖)
*Makoto A. YOSHIDA(NIES Lake Biwa Branch Office)

琵琶湖・淀川水系では2000年代初頭より,外来魚の1種チャネルキャットフィッシュIctalurus punctatusの侵入が確認されている.当初,本種の主要な捕獲地点は琵琶湖南湖および琵琶湖下流の瀬田川に限られていたが,2010年代以降,瀬田川より下流の宇治川,淀川本流ならびに支流木津川の上流部に位置する布目ダム湖でも散発的な報告がある.本種は,在来生態系および水産業への悪影響が懸念され,2005年に特定外来生物,2018年には緊急対策外来種に指定されており,水系全域での本種の現状把握は喫緊の課題である.
 本研究では,琵琶湖・淀川水系における本種の分布を水系全域で把握するため,過去および直近の捕獲情報を下記3通りの方法により収集した:(1)研究・教育施設への来訪者や釣り大会の参加者を対象としたチラシ配布・ポスター掲示,(2)SNSを活用した情報募集,(3)連携する他機関との情報共有.その後,得られた情報に基づいて本種の分布の現状を整理し,今後の重点的なモニタリングが必要な水域について考察した.
 上述の情報収集を通じて,市民・研究者14名および滋賀県水産試験場からの情報提供により,2001–2019年の28件315個体分の目撃・捕獲情報が集まった.直近3年で本種が確認されたのは以下の6水域:琵琶湖の南湖全域および北湖の南端部,瀬田川全域,天ヶ瀬ダムより下流の宇治川,三川合流付近,淀川大堰より上流の淀川,布目ダム湖内および布目川であった.このうち琵琶湖・瀬田川を除く4水域の情報はすべて個人から提供され,市民科学手法による情報収集は本種の分布把握に有用だと考えられた.本種の確認されなかった琵琶湖北湖(南端部を除く),木津川本流(最下流を除く),桂川水系の3水域では,本種の確認された水域との境界部を中心に,さらなる情報収集が必要だと考えられる.


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