| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-419  (Poster presentation)

北海道のアライグマにおける個体の体サイズデータに基づいた地域変異
Variation in body size of Raccoon (Procyon lotor) in Hokkaido

*山口沙耶, 上野真由美, 近藤麻実, 西川洋子(道総研環境研)
*Saya YAMAGUCHI, Mayumi UENO, Mami KONDO, Yoko NISHIKAWA(HRO IES)

北海道において1979年以降野生化したアライグマは分布拡大と個体数増加の一途をたどり、2018年度におけるアライグマによる農業等被害額は1.4億円となった。アライグマはスウィートコーンや果物といった栄養価の高い作物を集中的に食害していることから、アライグマの栄養状態が向上し、個体群増加率が高まっている可能性がある。道内の土地利用の地域差を考えると、アライグマの栄養状態は一様ではないと考えられるが、栄養状態に関わる地域変異とその要因に関する実証研究は乏しい。
本発表では、1999-2017年における北海道による捕獲事業のために捕殺された成獣アライグマ計6703頭(オス3373頭、メス3326頭)を対象に、体サイズ(体重)の地域差、また地域差を引き起こす要因(環境や生息密度)について検討した。
捕獲月や雌雄差を考慮した上で体重の地域差について一般線形混合モデルで検討したところ、市町村間に有意な体重差が認められた。次に、上記の解析結果において差が認められた市町村を対象に、各市町村におけるアライグマの生息密度指標(CPUE)と各市町村の畑地面積、水田面積を説明変数、体重を目的変数とした一般線形混合モデルを適用し、それぞれの要因が体重に与える影響を検討した。結果、体重に関して畑地面積は正の効果を、水田面積、生息密度指標は明確な効果がないことが明らかとなった。
農作物を守るため、多くの市町村において電気柵の導入などが進められているが、実際には全ての農家が実行できているわけではなく、また、アライグマを排除できるような設置方法になっていない事例が多く見受けられる。そのため、畑地面積が広い市町村では結果としてアライグマによる農地への侵入を許してしまい、良好な栄養状態をもたらしている可能性がある。被害を防ぐという観点だけでなく、アライグマの増加に歯止めをかけるためにも、農作物の被害防止対策が非常に重要であるといえる。


日本生態学会