| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-02  (Poster presentation)

ドジョウが水田で生存できる理由
The reason why loaches can servive at a rice field.

*奥川陽平(大阪府立富田林中学校)
*Youhei OKUGAWA(Tondabayashi J. High School)

ドジョウが生息する田んぼなど氾濫原水域は時に低酸素状態となり,エラ呼吸のみでは生存が困難である。そのような環境で生息できる理由を明らかにするため本研究を行った。ドジョウはエラ呼吸に加え,腸呼吸と皮膚呼吸を行うことが知られており,本研究では特に腸呼吸に着目した。研究材料にはドジョウ,池の代表的な魚種としてタイリクバラタナゴ,河川の代表種のオイカワ,そしてドジョウ科で河川に生息するオオシマドジョウを用いて,溶存酸素濃度を変化させ,エラ呼吸や鼻上げ行動の状況を観察し,低酸素に対する耐性について調べた。これらの実験に加え,ドジョウは低酸素と高酸素における腸呼吸の状況を観察し,腸呼吸に対する依存度を調べた。低酸素(約DO2mg/l)では,タイリクバラタナゴやオイカワは鼻上げをして,オオシマドジョウは腸呼吸も鼻上げ行動もせず瀕死状態となった。一方、ドジョウは鼻上げをせず,腸呼吸の頻度および肛門から排出する気泡の容積が増加し,生存への影響は認められなかった。低酸素で腸呼吸をできないようにすると瀕死状態となったが,高酸素では腸呼吸ができなくても生存への影響が見られなかった。以上の結果から,池や河川に生息する魚が瀕死状態となった低酸素環境において,ドジョウは腸呼吸を行うことで生存できることがわかった。水田のような氾濫原水域でドジョウが生息できるのは,ドジョウの腸は消化の役割のみならず呼吸の役割を持ち、腸呼吸という特異な呼吸法を獲得したからだと考えられる。今後は,ドジョウとオオシマドジョウの生活史について調査し,氾濫原と河川という生息環境の違いから,ドジョウ科魚類の進化について考えていきたい。


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