| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-18  (Poster presentation)

ヤマトサンショウウオの性フェロモンと受容体について
About a sexual pheromone and the receptor of Yamato salamander, Hynobius vandenburghi.

*市橋優花, 高山美怜, 森こと乃, 中村光希, 古田華, 近藤響希, 村瀬すぐり, 河野有香(岐阜県立岐阜高等学校)
*YUKA ICHIHASHI, MIREI TAKAYAMA, KOTONO MORI, KOKI NAKAMURA, HANA FURUTA, HIBIKI KONDO, SUGURI MURASE, YUKA KONO(Gifu Senior High School)

【動機や目的】有尾両生類ヤマトサンショウウオの生殖行動では,オスは産卵前のメスに対してアピールし産卵を促す行動をとるが,メスが産卵すると興味の対象を卵嚢へ移し,卵嚢に抱きつき放精する。この原因はメスが分泌する性フェロモンであると考え,物質の存在や性質を明らかにすることを目的とした。
【研究方法】繁殖期のメスより卵嚢を採取し,性フェロモンの存在の有無,分泌の場所,物性を行動実験により検証した。また,近縁種を用いた交雑実験と有尾両生類の分子系統解析を行い,遺伝的距離と近縁種間での性フェロモンの有効性について系統進化から考察した。さらにHPLCを用いて性フェロモンの物質同定を試みた。さらにRNA-seq解析のデータより,ヤマトサンショウウオの鋤鼻器官に発現する性フェロモン受容体遺伝子の特定を行った。
【結果】オスは卵嚢表面をこすりつけたスポンジや卵管,子宮部のホモジェネートに対し反応を示した。交雑実験では,近縁種12種のオスが卵嚢に反応した。HPLC解析では,ピークに差異が見られず有用な結果は得られなかった。RNA-seq解析の結果,性フェロモン受容体候補遺伝子を約70個特定した。
【結論】性フェロモンは卵嚢表面に存在,卵管・子宮部に起因していることが判明した。また性フェロモンの中では極めて珍しい,種間,属間で作用する可能性が示された。日本産サンショウウオの種分化は,生殖的隔離ではなく地理的隔離が原動力であると考えられた。
【今後の展望】行動実験を継続し,分析をさらに重ね,性フェロモンの分泌箇所や物質の特定を行い,有尾両生類の種分化や陸生環境への適応の原動力を追究していきたい。


日本生態学会