| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-23  (Poster presentation)

石川におけるチリメンカワニナの生息状況
The Habitat situation of Semisulcospira reiniana in Ishikawa river

*松尾拓未(大阪府立富田林高校)
*Takumi MATSUO(Osaka Tondabayashi H. School)

千早川(大和川石川水系)から分岐する「畑田水路」は、三面コンクリート張りのU字溝であるにもかかわらず,毎年初夏にはゲンジボタルが飛び交う。この環境でゲンジボタルが生活史を全うできるのか,疑問をもった。そこで,2020年1月25日,ゲンジボタルの幼虫の生息環境に着目して調査を行った。畑田水路は側面と底面がコンクリート製のU字溝(幅1.2m,長さ1.2m,深さ1.2m)を連結した構造で,部分的に水門を備えたユニット(以後「水門ユニット」という)が組み込まれていた。調査当日の水深は約25㎝,平均的な流速は0.6m/秒で,底面の大部分はコンクリートがむき出しの状態であった。しかし,水門ユニット(幅1.35m,長さ1.2m,深さ1.4m)は底面が約20㎝窪んでおり,そこには砂礫や巨礫が堆積していた。また,水門ユニットの左岸側は水平方向に約10㎝,右岸側は約5㎝,水平方向に広がっていた。そこで,水門ユニットを中心に流程2mの範囲を15区画(3×5,一辺0.4mの方形枠)に分割し,堆積物、流速、カワニナの個体数(ゲンジボタル幼虫のエサ),ゲンジボタル幼虫の個体数などについて調査を行った。その結果,水門ユニットの上下流の区画ではコンクリートがむき出しで,カワニナが生息しなかったのに対し,水門ユニットのいずれの区画にも一様に砂礫や巨礫(主に拳大)が堆積し,カワニナが生息していた。特に,水門ユニットの左右岸の広がった部分は流速が目立って遅く,カワニナの生息密度が高く,その区画のみでゲンジボタル幼虫の生息を確認した。以上の結果から,水門ユニットの20㎝の窪みが巨礫などを堆積させ,左岸側10㎝と右岸側5㎝の広がりが流速を弱め,その環境がカワニナ,そしてゲンジボタル幼虫の生息を可能にしていたと考えられる。


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