| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-49  (Poster presentation)

スミレ属における外来種および園芸種のルーツを探る
The origin of alien and horticultural species in Viola genus

*山口夏巳, 真鍋文月(兵庫県立小野高等学校)
*Natsumi YAMAGUCHI, Fuduki MANABE(Ono senior high school)

私たちは、園芸種であるパンジーと日本産スミレ属、大きさや花弁の色などの見た目が大きく異なっているのにもかかわらず、スミレ属に属するのか、また、属するのであれば日本産のスミレ属のどの節と近縁なのか。また、日本に帰化している外国産のスミレと日本産のスミレがどういう関係にあるのか興味が湧き、園芸種と帰化種について研究を始めた。
 園芸種は株式会社「サカタのタネ」協力で、いろいろなタイプの園芸種のサンプルを頂いた。サンプルは成葉の一番大きな葉を採取、葉からDNAを抽出、PCR法で葉緑体DNAのmatK領域を増幅させ、シーケンス解析を行った。データはMEGAで解析、分子系統樹を作成した。帰化種についても同様に分析している。
 帰化種は調査中でニオイスミレと「寒スミレ」の2種の分析が終了した。ニオイスミレ(Viola odorata)はヨーロッパ西部から西アジアの原産、明治30年頃に日本に輸入され、帰化したといわれている。「寒スミレ」と呼ばれている種は、おそらく、V.sororia(ソロリア)で、地下茎が発達しているところからアメリカスミレサイシンと思われる。形態的には日本のスミレサイシンに近い。両種とも過去の書籍と異なった結果が得られている。
園芸種であるパンジーはヨーロッパ原産のスミレを品種改良しており、日本産スミレ属と遠縁であると思われる。日本産スミレ属には黄色の色素を持つスミレが少なく、平地に特異的に分布するキスミレ(V.orientalis)、高山種のキバナノコマノツメ(V.biflora)や寒冷地から高山に分布するオオバキスミレ(V.brevistipulata)の仲間に限られる。株式会社「サカタのタネ」の研究者の方にはパンジーについて、耐暑性がないという話を伺っており、興味深い結果が得られた。まだmatK領域だけの分析に過ぎないが、途中経過を発表する。


日本生態学会