| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S03-3  (Presentation in Symposium)

haploid-diploid集団におけるFstの性質とその応用について
Fst in a haploid-diploid population

*別所和博(埼玉医科大学), Sarah P. OTTO(UBC)
*Kazuhiro BESSHO(SMU), Sarah P. OTTO(UBC)

 有性生殖を行う生物は、その過程でゲノムセット数が1セットの状態(haploid)と2セットの状態(diploid)が交代するという特徴を示す。そして、古典的な生物学では生物個体として存在する本体はdiploidの細胞から構成され、配偶子としてのみhaploidの相が生じる生活環を仮定してきた。しかし、生物を広く見渡すと、そういった「普通」の生活環から逸脱した複雑な繁殖システムが広く見られる。例えば、多くの大型藻類はhaploidとdiploid両方の細胞が多細胞化することで、生活環に二種類のステージが現れるという特徴を示す(haploid-diploid生活環)。
 本発表では、まずこれまで我々が行ってきたhaploid-diploid生活環を示す生物についての集団遺伝学的研究について話す。そして、この異なるゲノムセット数で特徴づけられる生物集団が、空間構造と相似であること、それが故、空間構造を示す生物集団を特徴づける指標であるFstに相当する指標が定義されうることを話す。最後にhaploid-diploid生活環を示す生物のcoalescent過程から定義されるFst的な指標を応用することで、藻類を始めとした倍数性構造を示す生物集団の繁殖システムを理解できるのか、という問題について現在行っている取り組みを話したい。


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