| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S09-2  (Presentation in Symposium)

広域調査から見えてきた鳥類の変化
Changes in bird abundance in Japan - patterns emerged from national surveys

*植田睦之, 守屋年史(バードリサーチ)
*Mutsuyuki UETA, Toshifumi MORIYA(Bird Research)

 2020年の完了を目指して,全国鳥類繁殖分布調査が行なわれている。この調査は全国に満遍なく配置された約2,300コースの現地調査を行ない,その他の観察情報や文献情報を合わせて,日本で繁殖している鳥類の分布図を描く調査である。同様の調査が1970年代と1990年代にも行なわれており,鳥類の現状を把握するとともに,その変化を明らかにすることも可能である。
 現時点で約9割の調査コースで調査が完了し,これまでの結果から
・小型の魚食性鳥類の分布が縮小しているが大型の魚食性鳥類は分布が拡大している
・森林性の鳥類は分布を拡大し,個体数も増加している,ただし標高の高いところに生息する種や藪を利用する種には分布の縮小がみられる
・農地など開けた環境に生息する普通種が減少している
ことなどが明らかになりつつある。
 こうした広域の網羅的な調査からは,日本の鳥の現状とその変化がわかり,また,減少している種,増加している種の生態的な共通点や地域や環境による変化の違いなどから日本で起きている環境の変化についても推測することができ,レッドリストの改訂など様々な施策にも有用な情報を提供できると考えられる。
 また,本調査は趣味で野鳥観察を行なっているバードウォッチャーが中心になって実施されている。全国各地に識別能力の高い観察者がいる鳥類ならではの調査と言えるが,今後も,こうした調査を実施できるように,調査結果の共有や成果の活用事例をアピールすることなどで,調査者のネットワークを維持/構築していくことが重要だと考えられる。


日本生態学会