| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S09-3  (Presentation in Symposium)

データ活用の可能性① 鳥類の種数・個体数と景観特性の解明およびトレンド推定
Understanding the relationships between bird diversity and landscape-scale factors and population trends of birds

*片山直樹(農研機構)
*Naoki KATAYAMA(NARO)

モニタリングサイト1000の特徴は、広域、複数年かつシステマティックに生物の分布や個体数が調査されていることにある。こうしたデータは生態学者にとっても活用しやすく、実際に研究事例も少しずつ増えており、生物の空間分布や経年変化(トレンド)に関する重要な知見が得られつつある。こうした成果を普及し、より多くの研究者の注目を集めることで、さらに研究を促進させ、我が国の生物多様性保全を考える上で極めて重要な知見が得られると期待できる。
本講演では、モニタリングサイト1000の鳥類データを活用した事例について紹介する。これまでの事例は空間分布に着目しており、各サイトの陸生鳥類の種数には(1)土地利用と気候の複雑な相互作用が影響すること、(2)繁殖期と越冬期で土地利用と気候の影響が異なることなどが明らかとなった。これらの成果は、鳥類の保全のために必要な生息環境を理解するための貴重な知見となっている。
さらに近年では、約10年間の経年変化をもとに種の増減に関する研究が始まっている。既に日本自然保護協会のレポートでは、日本の陸生鳥類の一部が減少していることが発表された。ただし、この結果は観察個体数にもとづいており、(時刻や天候などによる)調査ごとの発見率の違いを考慮していない。そこで私は、各年最大6回の繰り返し調査から、N-mixture modelを用いて発見率の影響を補正した上で、各種のトレンド推定を行った。その結果、ホオジロやツバメなどの開けた環境を利用する種が減少する一方、キビタキやセンダイムシクイなどの森林性種が増加している傾向が示された。これらの結果から、鳥類の種の増減に関するより頑健な証拠を提示できたと考えている。


日本生態学会