| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S18-7  (Presentation in Symposium)

実務者の立場から生態学分野の施策・事業を考える
Ecological policy and business from the standpoint of Practitioner

*小笠原奨悟(パシフィックコンサル)
*Shougo OGASAWRA(Pacific Consultants)

環境分野の実務者として、建設コンサルタント会社の環境部門に所属する「環境コンサルタント」が担うべき役割は大きいと考えられる。開発事業における環境アセスメント(動植物の現地調査や保全対策の立案等)や地方公共団体の環境基本計画・生物多様性地域戦略の計画策定支援などに従事しており、生態学の知見を現場に実装する役割を担っているともいえる。しかし、実務の現場では、環境の保全と事業予算、工期、推進体制等の社会・経済面での課題がトレードオフとなることが多く、必ずしも十分に現場での実装が進んでいるとは言い難い。
一方、近年注目を集めている「グリーンインフラ」や「地域循環共生圏」などの概念は、環境と社会・経済を対立軸で見るのではなく、環境・社会・経済の統合的な向上を目指そうとする概念である。これらの概念は、環境と共生した持続可能な社会の実現を目指したいという志を持つ実務者にとっても非常に関心の高いものであり、今後の展開が期待されている。そのためには、自然環境を「保全する」という側面からだけではなく、「活用する」という側面からの知見・技術が求められる。地域の生態系を活用し、社会・経済面での効果を発揮させるためにはどのような取組が必要か、また、持続可能な活用のためにはどのような管理を行う必要があるのか、現場の実務者にとっても、より幅広い技術が求められているといえる。さらに、多様な立場や経験を有する主体間の協働は不可欠であり、研究者・実務者・地域住民等の連携を促す仕組みやプラットフォームの構築が求められている。
これらの背景を踏まえ、生態学や生物多様性に関連する施策・事業に携わる環境コンサルタントの立場から、ポスト愛知目標や生物多様性の主流化に向けて求められる取組みを提案したい。


日本生態学会