| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 W09-4  (Workshop)

琵琶湖における特定外来生物ウスゲオオバナミズキンバイの侵入・繁茂につ いて
Invasion and overgrowth of/Ludwigia grandiflora/ subsp. /hexapetala/ in Lake Biwa

*稗田真也(滋賀県立大工)
*shinya HIEDA(University of Shiga Prefecture)

はじめに:特定外来生物オオバナミズキンバイは米国南東部から南米原産の抽水植物で、琵琶湖では亜種ウスゲオオバナミズキンバイの繁茂が社会問題となっている。侵入・繁茂の要因解明のため、群落構造と水鳥の糞中種子について調査した。
方法:群落内で見られる各生活形の生産構造を明らかにするため、層別刈取りを行い、同化器官(葉身)と非同化器官(主に茎)の湿重を測定した。さらに、茎・葉を水に浮遊させた状態で栽培し、萌芽数を記録した。また、湖岸で水鳥の糞を採集し、含有種子を調査した。
結果:形態可塑性により、水辺から岸にわたって3つの生活形(浮葉形・抽水形・陸生形)で適応し、独占的に繁茂していた。浮葉形は、水域群落の先端部で見られ、同化・非同化器官ともに水面の直上・直下に分布していた。抽水形は、水域群落のよく発達した群落内部で見られ、同化器官は主に水上に分布し、非同化器官は主に水中に分布し水底での定着もみられた。陸生形は、陸域群落の岩石護岸上で見られ、非同化器官は岩石護岸を這い、護岸隙間での定着もみられた。さらに、各生活形の茎断片や葉は、萌芽能力を有していた。また、水鳥の糞中には、本亜種の種子が発芽力を維持した状態で含有されていることを確認した。
考察:湖岸域の幅広い環境に各生活形で適応・繁茂していることから、琵琶湖での主な競争種は、抽水植物(ヨシ・マコモなど)、その沖に生育する浮葉植物(ヒシなど)、そこにまたがって生育する他の侵略的外来水生植物(チクゴスズメノヒエ・ナガエツルノゲイトウなど)であると予想される。さらに、希少種を多く含む「原野の植物」との競争が懸念される。各生活形の茎と葉には再生能力があることが明らかになったため、それぞれが繁殖体として水流散布されうる。さらに、水鳥の糞中で発芽可能種子の含有が確認されたため、分布地から離れていても侵入に注意が必要である。


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