| 要旨トップ | 受賞講演 一覧 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


第18回 日本生態学会賞/The 18th ESJ Award

研究の点・線・網
Points, lines and web in research

彦坂 幸毅(東北大学大学院生命科学研究科)
Kouki Hikosaka (Graduate School of Life Sciences, Tohoku University)

 どうしたら、良い研究ができるのか、ずっと考えてきた。いくつか気がついたことがある。
 研究に限らず、新しいアイディアは、二つのアイディアを結びつけることで生まれる。一つのアイディアは「点」で、複数の「線」を紡ぐことにより、新しい「点」が生まれる。「99%の努力と1%のひらめき」という言葉があるが、「すばらしい結びつき」を思いつけることが「ひらめき」なのだ、と私は思っている。「二つのアイディア」は、なんでもいいわけではなく、意味がない結び方も、意味があるけどつまらない結び方もある。良い結びつきを思いつけるかどうか、が大切なのだと思う。
 「良い研究」の評価基準は様々だ。その中の一つに、「インパクトの大きさ」というのがある。ある研究の「インパクトが大きい」ということは、その研究が提示した新たなアイディアが、多くの後続研究に使われている、ということだと思う。複数の「点」が複数の「線」で繋がれ、「網」になっていく。「網」の元になれるような研究をしたいといつも考えている(できているかどうかは別問題だが)。
 私は、これまでほとんどのアイディアを先行論文(自分の論文を含む)から得てきた。文献はアイディアの宝庫だが、自分だけではなく、他人も目にするものであり、同じようなアイディアを他人も思いつく可能性がある。生態学では、自分しか持ち得ないアイディアは、フィールドでの観察からしか出て来得ない。私はフィールドは好きだが、「なんちゃってフィールドワーカー」の域を出ていないので、フィールドから得たアイディアはなかったような気がする。若い諸氏には、ぜひフィールドから「自分だけのアイディア」を見つけていただきたい。


日本生態学会