| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) B01-02  (Oral presentation)

異なる作付体系(早植え栽培、普通期栽培、二毛作)の水田間での水生動物群集の比較
Comparison of aquatic animal communities in irrigated rice fields cultivated under different cropping systems

*安野翔(埼玉環科国セ)
*Natsuru YASUNO(CESS)

 水田には、多様な水生動物が生息する。主に関東地方以西の温暖な地域では、栽培する水稲品種等に応じて、水田間で田植え時期が大きく異なる場合がある。また、裏作として秋から翌年の田植え前まで麦を栽培する二毛作水田も見られる。しかし、田植え時期や単作、二毛作といった水田の作付体系が、田面水中の水生動物群集に対してどのような影響を及ぼすかについては不明な点が多い。本研究では、早植え栽培(4月末~5月植え)、普通期栽培(6月植え)、米麦二毛作(6月後半植え)の水田において、田面水中の水生動物群集を比較した。
 埼玉県加須市内の作付体系の異なる合計10枚の水田において、たも網による掬い取りで水生動物を採集するとともに、水田内の水温、pH、電気伝導度を測定した。調査は、2020年5月から7月にかけて、各水田の田植えから起算して2週間後、4週間後、中干し直前の5~6週間後の計3回ずつ実施した。
 調査期間を通じて、合計49分類群の水生動物が採集された。作付体系間での水生動物群集の違いについて、PERMANOVAによる重心の検定を行ったところ、有意な差が認められた。トウキョウダルマガエル幼生は、早植え栽培の水田でのみ採集された。二毛作水田では、単作水田に比べて10~100倍の個体数のユスリカ科幼虫が採集された。水生動物群集の主要な構成種である水生昆虫に着目し、水田内の環境(水温、pH、電気伝導度)、餌生物(ユスリカ科幼虫と貧毛類の個体数(常用対数))、田植えからの経過日数を説明変数とした一般化線形混合モデルにより解析した。その結果、水生動物の群集構造は作付体系によって異なっており、餌生物の個体数が水生昆虫の個体数と分類群数に影響を与えていた。二毛作水田では、麦の収穫後に麦藁を土中にすき込むため、麦藁が土壌中で分解されることで生じる有機物が、食物連鎖を通じてユスリカ幼虫、さらにはより上位の栄養段階に位置する水生昆虫を支えているものと推察された。


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