| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) C01-02  (Oral presentation)

音響計測と信号処理に基づくスズムシの鳴き交わしの特徴分析
Acoustic interaction of bell crickets examined by sound recordings and signal processing

*白坂誠浩(筑波大学大学院), 武田龍(大阪大学), 河辺徹(筑波大学), 合原一究(筑波大学)
*Masahiro SHIRASAKA(Grad. Sch., Univ. Tsukuba), Ryu TAKEDA(Osaka Univ.), Tohru KAWABE(Univ. Tsukuba), Ikkyu AIHARA(Univ. Tsukuba)

 コオロギ科の生物は、繁殖期に障害物の多い場所でオスが同種のメスをひきつけるために鳴く。このため、コオロギ科の生物にとって鳴き声は繁殖のために重要である。コオロギ科を含む直翅目の生物では、複数のオスが鳴いている際の個体間の発声回数の差やコーラスのリーダーフォロワー関係といった鳴き交わしの特徴に対して、メスの好みがあることが知られている。例えば、発声回数の多いオスや先に鳴くオスがメスに好まれることが複数の種で知られている。本研究でスズムシ(Meloimorpha japonica)に着目した理由は、日本における身近な生物であるにもかかわらず、発声回数と発声時刻に関する戦略がほとんどわかっていないからである。
 本研究では、まずスズムシのオス2匹を別々の虫かごに入れ、8本のマイクロホンで鳴き交わしを録音した。同様の実験を計40ペアに対して行い、その中で2匹が安定して鳴いていた4ペア分、計26時間分の音声データに対し数値解析ソフトウェアMATLABを用いて半自動解析した。その結果、スズムシは複数回鳴き続けたあとに鳴き止み、再び鳴き始めることがわかった。次に、オスの発声戦略の解析のため、鳴き続けている際の発声回数と鳴き始める時刻に着目して、2匹が鳴き交わす際に「単独で鳴いているときと比べ発声回数を増やしているか」と「先に鳴き始めるオスが決まっているか」について分析した。その結果、個体によっては鳴き交わす際に発声回数を増やす戦略、もしくは先に鳴き始める戦略のいずれかをとることがわかった。


日本生態学会