| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) C01-06  (Oral presentation)

サイカチマメゾウムシの交尾行動における性的対立:精包サイズと交尾経験 【B】
Mating behavior and sexual conflict in the seed beetle, Megabruchidius dorsalis: spermatophore size and mating experience 【B】

*嶋田正和, 長谷和子, 大林夏湖, 香月雅子(東大)
*Masakazu SHIMADA, Kazuko HASE, Kako OHBAYASHI, Masako KATSUKI(Univ. of Tokyo,)

サイカチマメゾウムシは国内最大の野生種で多回交尾する。高倉耕一やG. Arnqvistらによる先行論文で「性役割が逆転した甲虫」と呼ばれてきた。密度効果の実験に使われたアズキゾウムシの単純な交尾行動に比べ、本種は雌雄ともに触角を使って相手をなで擦るタッピング行動を示し交尾へと誘う。雄は体重の8%に及ぶ大きな精包(滋養分に富む)を雌に渡すので、雌は雄に積極的にタッピングで交尾をせがむが、雄から先に向かうこともある。今回は、山形市内の2019年7月と2020年7月採集の集団を使い、ハチミツと花粉で維持した。雌雄をグループ分けし、径35mm容器内で雌雄1ペアの交尾に関わる行動要素(雄と雌のどちらが先に求愛を開始するか、雄によるタッピング回数、雌のターン回数、交尾時間の長さ)、交尾前後の体重変化を、以下3項目で分析した。【1】先に求愛を開始する性の効果:雌から先に開始した方が、雄から先の場合よりも有意に大きな精包が授受された (LMM, P = 0.0014)。【2】2日連続の交尾で異なる相手 vs. 同一個体の交尾成功率:2日目に異なる相手との交尾成功率(18/22 =86.4%、2019年)は初日とで明確な有意差はないが(P=0.08)、同一相手との交尾成功率(12/22 =54.5%、2020年)は有意に減少した(P = 0.0004)。【3】日齢による交尾活性の変化:日齢を4期間に区分し(A:羽化後1~5日後、B:10日~15日後、C:20日~25日後、D:30日~35日後)、同一個体につき最大4回の繰返し実験を設定した(N=40ペア)。交尾成功率は A =15/40 (37.5%)、 B = 26/40 (65%)、 C = 24/33(72.7%)、D = 18/28 (64.3%)で、最高は期間Cだった。本種の性的対立と交尾戦略、子の遺伝的多様性の視点から考察する。


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