| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) C03-10  (Oral presentation)

外来種防除、研究から実装へ〜沖縄新規定着外来種ハヤトゲフシアリを例に〜 【B】
From research to implementation - collaborative countermeasures for an invasive ant newly established in Okinawa, Lepisiota frauenfeldi 【B】

*Masashi YOSHIMURA(OIST), Mayuko SUWABE(OIST), Kazuki TSUJI(University of the Ryukyus), Yosuke BABA(SC Environmental Science), Hiroshi KAKAZU(Naha City), Masako OGASAWARA(OIST), Jumpei UEMATSU(Kagoshima University), Evan P ECONOMO(OIST), Koji ONO(Ministry of the Environment)

 ヒアリの日本国内への侵入事例は、2017年以降現在に至るまで増加し続けており、外来アリ類への監視と防除は依然として大きな課題である。沖縄でも、早期発見と早期防除を目指した体制づくりが進められてきた。現時点では沖縄においてヒアリの発見事例は報告されていない一方で、2020年に那覇市の2ヶ所において特定外来生物のハヤトゲフシアリLepisiota frauenfeldiの定着が初確認された。こうした新規外来アリ類が島全体に蔓延する前に発見されることは、監視体制の充実による大きな成果であったといえるだろう。しかし、今回本種の主要な定着地点が日本の他の地域に見られるような港湾地域ではなく、米軍基地と自衛隊敷地に隣接した国道の地下であったことから、当該地域でハヤトゲフシアリの防除を実施するにはいくつかの問題が浮上した。その問題とは、面的な分布域把握と薬剤散布が難しいこと、国道地下礫層への営巣が予想されるため接触毒による防除が難しいと思われること、営巣場所を頻繁に変えること、本種の食性に関する知見が限定的なうえ既存の毒餌材の喫食性が思わしくないこと、そして、当該地域がこれまでヒアリ防除で構築した港湾関係者との連携によって網羅できる範囲外であること、などである。
 こうした問題を踏まえて、第一発表者らはヒアリ体制構築のノウハウを活かし研究機関、民間、行政機関による体制を新たに組織し、本種の生態的データを蓄積しながら最新の研究成果を活用し、成長阻害剤を使用した新しい防除戦略と、その評価のためのモニタリング手法を用いて那覇地域のハヤトゲフシアリ防除を試みた。本発表では、その概要と現時点での成果と課題を報告する。


日本生態学会