| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-020  (Poster presentation)

夜間のキノコ食者の解明
Elucidation of  Fungivores at night

*石川大智, 都野展子(金沢大学)
*Daichi ISHIKAWA, Nobuko TUNO(Kanazawa Univ.)

真菌類の胞子産生器官“キノコ”は、様々な動物に餌資源として利用されている。一方で、真菌類も動物を胞子散布者として繁殖に利用している可能性がある。真菌類の繁殖戦略を理解するには動物―真菌間の相互作用の解明が不可欠であり、キノコを訪れる多様な訪菌動物相が報告されてきている。しかし、これまでの調査は日中の野外観察や、子実体に生息する幼虫の羽化個体の採集から行われることが多く、滞在時間の短い動物や、夜間のみ訪れて産卵せずに摂食する動物の情報が落ちている可能性がある。そのため、訪菌動物相の全体像を把握するためには、時間帯に制限されない、中立的な調査が必要である。
 本研究では、デジタルカメラのインターバル撮影機能によって訪菌動物群集を時間帯をとわず調査し、昼と夜で比較した。石川県金沢市および富山県富山市において、ハラタケ目、ベニタケ目、イグチ目の子実体84本にカメラを設置し、15分間隔で写真を撮影、画像に写った動物を同定した。撮影された11078枚の画像から、6綱24790個体の動物が観察され、双翅目トゲハネバエ科は昼のみ、直翅目カマドウマ科は夜のみキノコを訪れた。真菌目ごとに群集構成を昼夜で比較すると、ハラタケ目とベニタケ目では昼にショウジョウバエ科、夜はアリ科が優占し、群集の類似度は昼と夜で異なった(ANOSIM, p<0.001)。一方で、イグチ目では昼夜をとおして小型甲虫が優占し、群集の類似度は昼と夜で明瞭な違いはなかった(ANOSIM, p=0.06)。また、訪菌動物を飛翔性、地表徘徊性、判別不可に分類し、キノコ間の合計動物個体数の差を考慮した相対値を比較した。いずれの真菌目においても時間帯によって有意に変動し、飛翔性動物は昼に増加し(ANOVA, イグチ目 p=0.004; ベニタケ目p<0.001; ハラタケ目 p<0.001)、地表徘徊性動物は夜か薄明に増加したことから(ANOVA, イグチ目p<0.001; ベニタケ目 p<0.001; ハラタケ目 p<0.001)、昼夜で訪菌動物群集の生態学的特徴が異なることが示唆された。


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