| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-023  (Poster presentation)

猛禽類は繁殖期に餌資源を使い分けているのか ーDNAメタバーコーディングによる解析ー
Whether raptors use different food resources during the breeding season -Analysis by DNAmetabarcoding-

*清水拓海(慶應義塾大学), 長船裕紀(所属なし), 一ノ瀬友博(慶應義塾大学)
*Takumi SHIMIZU(Keio Unive), Yuki OSAHUNE(No affiliation), Tomohiro ICHINOSE(Keio Unive)

 生態学的に類似した種が共存する場合、それらは餌資源の量や種類といったリソースを使い分けることで競争を避ける。つまりニッチ(生態的位置)を分化させる。その詳細な解明は生態系への理解やその管理につながる.特に猛禽類などの頂点捕食者が種間でどのように棲み分けを行っているのか,繁殖期に利用する餌資源に着目し,研究を行った.猛禽類の食性解析は多くの研究においてビデオカメラや望遠鏡を用いて採餌行動を観察する直接観察や、食べ残しや胃内容物を観察する手法が主に用いられてきた。これらの手法はいずれも目視による解析であり、消化の状態やそのサイズによって餌動物の検出率に大きな差を生じさせるだけでなく、高度な形態学的知識と長い解析時間を要する。つまり誰にでもできるわけではなく、かつ簡易的なものでもない。
 捕食者の胃内容物や糞には、餌動物由来のDNAが含まれており、それらを識別することができればより詳細な食性解析を行うことができる。そのため,新たな食性解析手法として近年の発展が著しいDNAメタバーコーディング技術を猛禽類が吐き出すペリットに適用した.
 似た環境に生息している5種類の猛禽類(オオタカ,ノスリ,トビ,トラフズク,フクロウ)を対象に解析を行ったところ,目視での識別が困難だった小型鳥類や小型哺乳類などを種レベルで検出した.種によって利用する餌資源の分類群や種数が異なることから,餌資源利用におけるニッチ分化の使い分けについて一定の情報を得ることができた.また,一般に公開されているユニバーサルプライマーを2種類併用したところ,プライマーによって同じサンプルから検出された餌動物が異なったため,プライマーは複数併用する必要性がある点についても議論したい.


日本生態学会