| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-024  (Poster presentation)

カラマツ人工林皆伐後3年間におけるヤマネとヒメネズミ生息状況の変化様式
Three year change of inhabitation of Glirulus japonicus and Apodemus argenteus after clear cutting of larch plantation

*坂巻孟, 遠藤啓生, 杉山昌典, 上條隆志(筑波大学)
*Hajime SAKAMAKI, Hiroki ENDO, Masanori SUGIYAMA, Takashi KAMIJO(Tsukuba Univ.)

森林の公益的機能の維持・発揮のため、森林管理上の各種施業が生態系へ及ぼす影響を精査した上で施業を実行する必要がある。森林管理において伐採は木材生産や森林の更新を担う重要な施業であるが、林分構造を大きく変え生態系へ多大な影響を与える可能性がある。伐採が森林生態系へ及ぼす影響については、種や分類群により多様な報告がされている。中でも樹上性小型哺乳類は生存のための資源の多くを森林に依存するため、伐採による影響が特に大きいと考えられる。本研究では人工林における皆伐施業が樹上性小型哺乳類の生息状況に与える影響を明らかにすることを目的とした。
筑波大学山岳科学センター川上演習林のカラマツ林分で実施された皆伐更新試験地(約1 ha、4カ所)周辺において樹上巣箱を架設し、樹上性小型哺乳類による利用を調査した。環境要因の把握のため、各調査地点で毎木調査と開花結実調査を実施した。巣箱利用率を皆伐地林縁部と林内で比較し、皆伐の影響を検証した。
巣箱調査の結果、ニホンヤマネ(Glirulus japonicus)・ヒメネズミ(Apodemus argenteus)の巣箱利用が確認された。ニホンヤマネによる巣箱利用率は皆伐後1年目に有意に減少した。2年目では減少が軽減され、3年目では減少傾向は検出できなかった。ヒメネズミによる巣箱利用率は皆伐後2年目において増加の傾向が見られたが、3年目では増加は検出されなかった。また巣箱利用率に影響を与える環境要因については、下層木本数についてニホンヤマネ・ヒメネズミともに正の効果が見られた。皆伐後1年目はニホンヤマネ・ヒメネズミへの影響が大きかったが、2年目以降では影響が減少する傾向がみられた。小規模な皆伐は樹上性小型哺乳類の巣箱利用に影響を与えるが、比較的早期に回復すると考えられる。


日本生態学会