| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-033  (Poster presentation)

人為かく乱下でのミヤマシジミ・共生アリ・寄生バエの相互関係の季節変化
Seasonal variations of the interactions among the butterfly (Plebejus argyrognomon), mutualistic ants and parasitic flies under human disturbances.

*葉雁華, 出戸秀典, 宮下直(東京大学)
*Yenhua YEH, Hidenori DETO, Tadashi MIYASHITA(The University of Tokyo)

ミヤマシジミ(Lycaeides argyrognomon)は本州の中部地域の河川沿いや農地の土手などに生息するが、環境の変化により全国的に個体群が激減しており、絶滅危惧IB類に指定されている。日本に生息するミヤマシジミの幼虫は単食性で、マメ科のコマツナギ(Indigofera pseudotinctoria)しか食べない。また、幼虫は何種類かのアリと共生関係を築く。調査を行っている長野県飯島町は、年間3~4世代発生すると考えられている。この地域の個体群は主に農地の土手に生息し、アリとミヤマシジミの幼虫の共生関係やミヤマシジミの個体数変化は農業の草刈りが影響していることも知られている。
本研究では上記の背景を受け、ミヤマシジミを中心に、共生アリや寄生バエなどとの相互関係、およびそれらに対する草刈りの影響について調べる。2019年5月から2020年10月まで、16か所の調査地に5世代の幼虫を調査して、データはGLMMで解析した。結果は以下のことが示されている:
(1) コマツナギの被度、クロヤマアリの個体数の一次項は幼虫の個体数との正相関があって、また、アリと共生関係あるコマツナギアブラムシは幼虫の個体数との負相関がある。
(2) 幼虫の寄生率とアリの随伴関係は、随伴アリの個体数が多い場合、寄生率は低くなる結果を示される。とくにクロヤマアリが随伴される幼虫で寄生率が有意に減ることがわかった。
(3) 2020年の2世代目の幼虫ではシヘンチュウ(センチュウの1種)の寄生率が顕著に増えた。例年以上に降水量が多かったことが、センチュウの活動を高めた結果と思われる。
(4) 寄生バエからの寄生率は、草丈が高い場所で低い場所よりも高いことがわかった。
上記の結果をもとに、ミヤマシジミと共生者、寄生者との関係に対する人為攪乱の影響について議論するとともに、本種を保全するための効果的な方法を探る。


日本生態学会