| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-079  (Poster presentation)

ミバエの一種はミカンコミバエが避ける質の悪い寄主に産卵する
Bactrocera albistrigata, Tephritid fruit fly chooses host plants avoided by oriental fruit fly

*久岡知輝(滋賀県立大学院), Sugeng SANTOSO(IPB univ.), 西田隆義(滋賀県立大学院)
*Tomoki HISAOKA(Univ. Shiga Pref.), Sugeng SANTOSO(IPB univ.), Takayoshi NISHIDA(Univ. Shiga Pref.)

植物を利用する昆虫は特定の植物しか利用しないことが知られてきた.近年,この要因として繁殖干渉が注目されている.繁殖干渉は,成虫間にはたらく種間相互作用でオスによる性的なハラスメントにより,異種メスの適応度を減少させる現象である.現在,インドネシアに生息する2 種のミバエ,Bactorcera dorsalis (Bd) とB. carambolae (Bc)の間には繁殖干渉がはたらいており,Bdが両種の最適寄主であるマンゴーを主利用していることが知られている.この両種と同所的に存在するミバエの一つとして,B. albistrigata (Ba) がいることが知られている.本種はインドネシア・ジャワ島でローズアップル類を最もよく利用している.しかし,BcBdでは, 幼虫の発育パフォーマンスは他の寄主植物 (マンゴー,スターフルーツ,グァバ) と比較して,ローズアップルが最も悪いことが報告されている.寄主による発育パフォーマンスの違いは,近縁種間で類似する場合が多いので,おそらくBaの発育パフォーマンスもローズアップル類で低い可能性が高い.そこで, 本研究では, Baはローズアップル類での発育パフォーマンスが低いという仮説を検証した.検証はBaの幼虫を4 つの果実で飼育し,蛹化した時の蛹重量および成虫に羽化した時の生存率によって測った.その結果,各果実における蛹重量をみるとマンゴー,スターフルーツ,グァバ,ローズアップルの順で重く,最終的な生存率はマンゴー,スターフルーツ,ローズアップル,グァバの順であった.インドネシア・ジャワ島でのBaの主要寄主植物はローズアップル類とグァバであることが知られている.しかし,本研究の結果,幼虫の生存率は,野外ではあまり利用していないマンゴー,スターフルーツでむしろ高かった.このことは本種がBcBdの主要寄主を避けている可能性を示唆した.


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