| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-094  (Poster presentation)

環境DNAを用いたダム湖における魚類繁殖期の推定
Estimating the spawning period of fish species in a reservoir using environmental DNA analysis

*呉盧漢(神戸大・院・発達), 稲川崇史(応用地質(株)), 沖津二郎(応用地質(株)), 源利文(神戸大・院・発達)
*Luhan WU(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U), Takashi INAGAWA(OYO Corporation), Jiro OKITSU(OYO Corporation), Toshifumi MINAMOTO(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U)

  環境DNA分析は新しい技術として、魚類の繁殖期を推定するのに有望である。魚類の繁殖行動によって、大量の精子や卵子が水中に放出されるため、繁殖期に環境DNA濃度が上昇するほか、精子にはミトコンドリアが少ないため、精子放出に伴い環境中の魚類の核/ミトコンドリアDNA比も上昇すると考えられる。これらの仮定をもとに、環境DNAを用いたダム湖におけるコイ、オオクチバス、ブルーギルの繁殖期を調べる手法の確立を試みた。2019年と2020年の3月から8月まで、福島県の三春ダムの蛇沢川前貯水池内の3つのサイトにおける週1回のサンプリングを行ったほか、2020年6月23日から7月3日の期間に、6つのサイトで毎日サンプリングした。それらの水サンプルから、コイ、オオクチバス、ブルーギルの環境DNA濃度および核/ミトコンドリアDNA比を調べた。GAMMを利用して環境DNA濃度と比率を評価した結果、温度とpHは環境DNA濃度に統計的に有意な影響を与えたが、比率について統計的に有意な説明変数は見つからなかった。環境DNA濃度の日付による分布の結果、コイは4~5月、オオクチバスは6~8月、ブルーギルは6~8月にそれぞれ環境DNA濃度がピークに達した。次に、環境DNA濃度および比率データの外れ値を魚類の繁殖活動の事前推定として、Logistics Regressionモデルを用いて、毎日サンプリングを行った時期のオオクチバスとブルーギルの繁殖確率を推定した。環境DNA濃度を繁殖活動の確率に変換することで、魚類が繁殖したかどうかをより直感的に判断することができることが示された。


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