| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-148  (Poster presentation)

オオミズナギドリの帰巣時にみられる特異な飛行行動に影響を与える外的要因
External factors affecting the unique flight behavior of streaked shearwaters when returning to a breeding colony

*原田和輝, 上坂怜生, 佐藤克文, 坂本健太郎(東京大学)
*Kazuki HARADA, Leo UESAKA, Katsuhumi SATO, kentaro Q. SAKAMOTO(The University of Tokyo)

育雛期のオオミズナギドリ(Calonectris leucomelas)は、日中は海面付近を低空で飛行しながら餌場間を移動し、日没後に繫殖地に戻ってくる。これまでバイオロギングを用いた飛行メカニズムの研究は、海上飛行時については多く行われてきた一方、繁殖地の島周辺ではほとんど行われていない。しかし、通常、繁殖地は高度数十mに位置しており、繁殖地への帰巣時の飛行様式は海上での飛行様式と異なっていると考えられる。そこで、本研究では帰巣時における飛行メカニズムの解明を目的とした。
研究に使用した飛行データは、2018年と2019年に岩手県の船越大島(高度45m)にて、GPSによる位置データを5Hz、3軸加速度を100Hzで記録するロガーをオオミズナギドリの背面に取り付けることで収集された。このうち繁殖地の島に帰ってくる過程が記録されていた6個体のデータを解析した。
オオミズナギドリは海上を飛行時、滑空と羽ばたきを織り交ぜた飛行様式で海面付近を飛行し続ける。しかし今回の解析結果から、島に接近してから着陸するまでの3~27分の間羽ばたき続けて飛行している部分があること、またその部分で継続的に飛行高度が上昇していることが判明した。この継続的な上昇を行っている部分では羽ばたき周波数の中央値が4.31±0.16Hz(各個体から得られた中央値の平均値±標準偏差)となっており、海上飛行時の3.98±0.13Hzよりも上昇していることが分かった(p<0.001;t検定)。
飛行高度を上げるには追加の揚力が必要となるが、オオミズナギドリが海上を飛行している時の羽ばたき周波数では継続的に高度を上昇させるのに十分な揚力が得られないのではないかと推察された。そのため海上よりも高い周波数で羽ばたきを行い追加の揚力を得ることで、継続的な上昇を達成している可能性がある。


日本生態学会