| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-160  (Poster presentation)

景観アプローチから明らかにする都市における植物の適応進化
Landscape approach toward an understanding of adaptive evolution of plants in urban environments.

*石黒智基(北海道大院環境科学院), Marc T. J. JOHNSON(Univ. of Toronto), 内海俊介(北海道大学 FSC)
*Tomoki ISHIGURO(Environ Sci, Hokkaido Univ.), Marc T. J. JOHNSON(Univ. of Toronto), Shunsuke UTSUMI(FSC, Hokkaido Univ.)

都市化は、気温の上昇、不浸透面の増加、生息地の分断、汚染の増加などの劇的な環境変化を引き起こす。このような環境変化は生物多様性や生態系の特性に強い影響を与えることが報告されているが、近年、都市化が生物の進化に及ぼす影響について新たに注目が集まっている。しかし、都市環境のどの要素が、どのように進化に影響を与えるのかについては、まだ多くのことが明らかになっていない。これは、多くの環境要素が都市化勾配に沿って変動しているのに加え、二分的な比較(都市個体群vs郊外個体群)やトランセクトによる調査(都市から郊外へのトランセクト)といったアプローチが主流だからである。そこでわれわれは、さまざまな環境要素および種内の形質変異のそれぞれについて、都市から郊外にかけての地域一帯における空間分布を包括的に捉えて解析することが必要だと考えた。

本研究では、シロツメクサ(Trifolium repens)の被食防衛形質であるシアン産生能 (シアノジェネシス) に着目し、都市から郊外までのその変異の詳細な空間分布を明らかにし、どのような環境要因がシアン産生能の進化に影響を与えているのかを解明することを目的とした。

都市中心から郊外農耕地帯を含む札幌市近郊(札幌駅付近を含む約300㎢)の122地点で、それぞれ約27個体のシロツメクサを採取した。計3300個体のシロツメクサを用いて、都市から郊外までのシアン産生能の有無の空間変異を調べた。また、被食度や生育地の開空度も調べた。あわせて、GISデータベースより気温や積雪深などの景観データを得た。これらから、主に被食度と気温の違いによって、シアン産生能の集団内頻度が変化することがわかった。その一方で、空間変異の予測モデルを構築作成した結果、シアン産生能の頻度は、都市中心から郊外にかけて単調ではない複雑な変化を示すことが分かった。本発表ではこれらの結果について報告し、議論する。


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