| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-195  (Poster presentation)

雌雄異株低木シロモジにおける水利用特性
Water-use patterns in dioecious shrub <i>Lindera triloba<i>

*柴田とも乃(名古屋大学), 中川弥智子(名古屋大学), 松尾奈緒子(三重大学)
*Tomono SHIBATA(Nagoya Univ.), Michiko NAKAGAWA(Nagoya Univ.), Naoko MATSUO(Mie Univ.)

雌雄異株植物では繁殖コストの違いにより、成長や繁殖において性差が認められたという例が多く報告されているが、性差が検出されなかった例も報告されており、性差に関する現象は一般化されていない。また、地上部の性差に関する研究は多く行われている一方で、地下部の性差に着目した研究はほとんど行われていない。そこで本研究では、乾燥ストレス耐性の決定要因の1つである吸水深度と根系形態を調べることにより、雌雄異株低木シロモジ(Lindera triloba)における水利用特性の性差を検証することを目的とした。
名古屋大学大学院生命農学研究科附属稲武フィールド内に設置した調査プロットで、雄11個体と雌11個体のシロモジのシュートと、5地点の土壌を2020年4、6、8、10月にそれぞれ採取した。採取したシュートと土壌から、低温真空蒸留法により水を抽出し、抽出した水の酸素の安定同位体比を質量分析法を用いて分析した。吸水深度の推定には、混合ベイズモデルであるMixSIARを用いて、表層(20 cm)、中層(50 cm)、深層(80 cm)の各土壌層からの吸水割合を推定した。根系形態は、雄3個体と雌3個体の根を掘り出し、根の深さや太さなどを計測して性差があるか検証を行った。
雌雄ともに土壌含水率が高い6月には、吸水コストが少ない表層から主に吸水を行い、土壌含水率が低い8・10月には、中層や深層からの吸水割合を増加させていたため、生育環境の水分状況に応じて、季節によって吸水深度を変えている可能性が示唆された。また中層(50 cm)において、雄個体は雌個体に比べて有意に吸水割合が大きくなっていた。雄個体は種子や果実に資源を投資しないため、雌個体に比べて根に資源をより多く投資できたと考えられる。根系形態について、雌雄で有意差は認められなかったが、調査個体数を増やした再検討や細根量の調査が必要だと考えられる。


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