| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-205  (Poster presentation)

斜面に生育するテンナンショウ属植物の花序はどこを向くのか?
What direction do inflorescences face in Arisaema species growing on slopes?

*川上風馬(神戸大学), 松本哲也(岡山大学), 中田泰地(神戸大学), 矢井田友暉(神戸大学), 大西麻衣(神戸大学), 丑丸敦史(神戸大学)
*Fuma KAWAKAMI(Kobe Univ.), Tetsuya K. MATSUMOTO(Okayama Univ.), Taichi NAKATA(Kobe Univ.), Yuki YAIDA(Kobe Univ.), Mai ONISHI(Kobe Univ.), Atushi USHIMARU(Kobe Univ.)

 被子植物の87.5%は動物に花粉媒介を依存しており、それぞれの送粉者に適応した多様な花形質が進化してきた。植物の花は色や模様などで視覚的に送粉者の誘引をする一方で、匂いが送粉者の誘引に重要な役割を果たす植物も少なくない。
 視覚的に送粉者を誘引する植物では、花の外見だけではなく、花を定位させる向きも繫殖成功に影響を与える重要な形質である。斜面に生育する林床性の草本種は、空間的に開けた斜面下方へ花を向けることで、より多くの送粉者を視覚的に誘引すると考えられている。一方で、主に匂いによって送粉者を誘引する植物では、匂いの拡散が訪花頻度に影響すると予想され、視覚的なものとは異なった花の向きへの選択圧がかかる可能性があるが、花の向きが訪花頻度に与える影響はもちろん、斜面上で特定の向きに定位させるのかどうかについても調べられていない。
 そこで本研究では、匂いにより送粉者を誘引するテンナンショウ属植物6種を対象に、(1)斜面上で花序を特定の方向に定位させるのか、(2)その定位はどのような要因(斜面環境、光条件、葉序)によって規定されているのか検証した。
 調査した6種のうち5種で、花序は有意に斜面上方、林冠の開けた方向と反対側を向く傾向があった(Rayleigh test, p < 0.05)。全種で、花序は有意に第一葉(テンナンショウ属植物の2枚ある葉のうち、大きい方)と反対側を向いていた(p < 0.05)。
 斜面下方、林冠が開けた方向、第一葉の向きから見た花序の向き(角度の差)について、種内でのばらつきを比較した結果、第一葉の向きから見た花序の向きのばらつきは、斜面上方および林冠が開けた方向から見た花序の向きのばらつきよりも有意に小さかった(Rao’s homogeneity test, p < 0.05)。
 以上の結果から、斜面におけるテンナンショウ属植物の花序の向きにみられる傾向とその規定要因ついて議論を行う。


日本生態学会