| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-265  (Poster presentation)

亜高山帯林における土壌呼吸の季節変化 :根の除去実験
Seasonal Change of Soil Respiration in a Subalpine Forest:Root-removal Experiment

*増田春樹, 高橋耕一(信州大学)
*Haruki MASUDA, Koichi TAKAHASHI(Shinshu Univ.)

 土壌呼吸速度は根圏の独立栄養生物による呼吸速度(AR)と根圏以外の微生物による呼吸速度(HR)に分けられる。この研究では、標高傾度にそった地温と土壌水分に対するARとHRの反応の違いを明らかにするため、乗鞍岳(長野県)の亜高山帯(1600~2800 m)の5標高でARとHRの季節変化を測定した。各標高で根の除去区を設定し、HRを測定した。処理区の土壌呼吸速度(AR+HR)からHRを引くことでARを推定した。
 根の除去によって除去区の土壌含水率が増加したが、地温は変化しなかった。ほとんどの標高で、AR、 HRともに地温と正の相関があったため、夏に高くなり、夏のARは高い標高ほど低い傾向があった。一方、HRの標高間の差は明瞭ではなく、標高2000 mで最大値を取った。このことから、ARはHRよりも地温の影響を強く受けると考えられる。AR、 HRともに土壌水分とも相関がみられたが、地温に比べれば明瞭な関係性はなかった。標高2000m以上では、HRは土壌中の木質リターの量と正の相関があったため、高い標高で未分解有機炭素量が減少することで、HRが減少したと考えられる。ARは標高が高くなるほど低かった。これは、高い標高では細根量が減少するためであった。しかし、夏の細根重あたりの呼吸速度は、バラつきは大きいものの標高と正の相関があった。つまり、生長期間の短い高標高では、地下部の生長が活発に行われていた。
 以上の結果から、(1)根の除去によって土壌含水率は増加したが、地温、呼吸速度には影響がなかったこと、(2)標高傾度にそって、リター量や細根量は変化していたこと、(3) HRの標高間の違いには地温だけでなく土壌中の未分解炭素量が大きく影響していたことが明らかとなった。また、ARの標高との負の相関は細根量に起因しており、細根の呼吸速度も地温に依存していることが示された。したがって、気候変動は地温や土壌中の未分解炭素の分解速度に影響することで、ARとHRを高めることが示唆された。


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