| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-357  (Poster presentation)

探索犬を用いたアライグマの糞探索
Search for raccoon scats using detection dogs

*山崎夏実(東邦大学大学院), 福澤めぐみ(日本大学), 井上英治(東邦大学), 長谷川雅美(東邦大学)
*Natsumi YAMAZAKI(Toho Univ. of Edu.), Megumi FUKUZAWA(Nihon Univ.), Eiji INOUE(Toho Univ.), Masami HASEGAWA(Toho Univ.)

侵略的外来種アライグマの被害対策の基礎研究として,様々な目的の行動・生態・遺伝学的研究が行われてきた.これまでのアライグマ研究は,個体の捕獲を前提にしてきたため,捕獲作業に多くの人手と時間,労力がかかっていた.一方,陸生哺乳類全体を見渡すと,発見・入手がより容易な糞を用いた研究が多く行われてきた.しかし,アライグマの糞は発見が非常に難しく,どのような場所にアライグマが糞をするのかわかっていない.そこで,近年注目されているのが,探索犬である.外来種対策や絶滅危惧種保全において,特別な訓練を受けた犬を伴侶として,犬と人の共同による精度の高い探索が可能となっている.
 本研究は,探索犬を活用することで,人による探索では発見することが難しいアライグマの糞採集を可能にし,アライグマ研究のツールとして利用できるかどうか検証した.
 2頭の成犬(ジャーマン・シェパード・ドッグ,ラブラドール・レトリバー)を,アライグマの臭気に反応するようにトレーニングし,野外探索を行った.
 野外探索で採取した糞がアライグマのものか確認するために,糞中DNAを抽出し,PCR法でDNA断片を増幅し,塩基配列を読み取って種の特定を試みた.
 野外探索の結果,イヌとネコの糞に反応を示すこともあったが,トレーニングの際に,イヌやネコの臭気も用いることで改善されると考えられる.探索犬は水辺において強く反応を示し,アライグマの糞を発見していた.水辺を中心に探索を行うことでさらに効率的に糞を採取することができるだろう.また,夏場においては,糞を発見することができなかった.これは,湿度が高いことで臭気をたどることができなかったと考えられる.
 探索犬がアライグマの研究ツールとして活用されるためには,ほかの種に反応しないようにトレーニングを行うことや,気温や湿度,天候など様々な状況を想定してトレーニングを行うことが重要であると考えられる.


日本生態学会