| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-384  (Poster presentation)

那賀川における置土が砂州上の陸生節足動物に及ぼす影響
Effects of the sediment placement on terrestrial arthropods on sandbars in the Naka River

*中西淳(徳島大学), 藪原佑樹(徳島大学, 千葉県庁), 佐藤雄大(徳島大学), 河口洋一(徳島大学)
*Jun NAKANISHI(Tokushim Univ.), Yuki YABUHARA(Tokushim Univ., Chiba prefectural office), Takahiro SATO(Tokushim Univ.), Yoichi KAWAGUCHI(Tokushim Univ.)

近年ダムによる河川環境への影響が表面化する中,ダム湖に堆積した土砂の置土によるダム下流への還元という対策は,貯水機能のみならずダムによって劣化した下流の河川環境の回復にも効果があると期待されている.しかし,評価の対象は水中が中心であり,エコトーンを対象とした研究は国内では例がない.エコトーンは河川生態系の生物多様性を支える重要な領域であるため,事業評価においても考慮に含める必要性がある.本研究は徳島県南部を流れる一級河川の那賀川において,ダムを境とした3つの区間(以下自然区(土砂供給有り)・置土区・粗粒化区(土砂供給なし))に分類した.区間ごとに物理環境と地表徘徊性昆虫の種組成に着目しながら,置土の影響を明らかにすることを目的とした.地表徘徊性昆虫を区間ごとにピットフォールトラップで採集し,同じ地点で砂州表層の礫の粒径や土壌水分,貫入深を物理環境として計測した.調査は6月と11月に行い,台風による出水前後における砂州の状況も調べた.調査の結果,置土区は初夏・晩秋ともに粗粒化区よりも中礫が多かった.晩秋では細礫が多く,巨礫の成分は少なかった.置土区では11月の貫入深が6月より大きかった.出水によって特に置土区では礫の組成が変わり,貫入深に影響を及ぼしたと考えられる.昆虫群集は初夏・晩秋ともに,自然区が他の区間と異なった.自然区では中礫や貫入深と相関のある種が多く,置土区では細礫と相関のある種が多かった.粗粒化区は個体数・種数ともに少なかった.この傾向は11月において特に顕著であった.以上の結果から,置土による粗粒化の回復は限定的であることが示唆された.置土区と自然区は物理的な環境も地表徘徊性昆虫の組成も異なっており,その要因は置土の礫組成が自然に供給される土砂の組成と異なるからと考えられる.本来の土砂供給による礫環境を目指すならば,置土の礫組成を見直すことで改善する可能性がある.


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