| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-019  (Poster presentation)

スギ人工林におけるニホンヤマネ(Glirulus japonicus)の環境選択
Environmental selection of Japanese dormouse (Glirulus japonicus) in Cedar plantation

*末廣春香(山口大学), 細井栄嗣(山口大学), 村上恵梨(山口大学), 田中浩(山口県立博物館)
*Haruka SUEHIRO(Yamaguchi Univ.), Eiji HOSOI(Yamaguchi Univ.), Eri MURAKAMI(Yamaguchi Univ.), Hiroshi TANAKA(Yamaguchi Prefectural Museum)

 ニホンホンヤマネ(Glirulus japonicus,以下ヤマネ)は,齧歯目ヤマネ科に属する小型哺乳類である.1属1種の貴重な種であるため,国の天然記念物に指定され,各県のレッドデータリストに掲載されている.そのため各地で保護を目的とする生態の研究が行われている.
 ヤマネは生息環境として落葉樹林や天然針葉樹林を好むとされるが,山口県ではもっぱらスギ人工林において生息が確認されている.山口県のヤマネは,過去の研究を通してもその生態については不明な点が多い.そこで,スギ人工林でのヤマネの生態を明らかにすることを本研究の目的とし,分析を行った.
 調査地である周南市鹿野の長野山中腹の五万堂渓谷(標高約550~700m)に設置した144個の巣箱を用いた巣箱調査のデータを使用した.ヤマネがスギ人工林でどのような環境を選択し,高所に設置した巣箱を利用しているのかを明らかにすることを目的として,一般化線形モデル(GLM)を用いた環境選択の解析を行った.本調査地ではヤマネによる巣箱利用が秋に多いことから,秋における利用巣箱15個と非利用巣箱15個をランダムに選択し,これら30個の巣箱が設置された地点を調査プロットとした.各プロットで巣箱設置木を中心とする半径5mの区域を設け,植生と地形に関するデータを収集した.ヤマネの巣箱利用を目的変数,収集した環境データを説明変数として一般化線形モデルによる解析を行った.
 環境選択解析の結果,ヤマネの巣箱利用に影響を与える変数として低木の本数,高木の本数,川からの距離の3変数が選択され,低木に比べ高木密度が高い環境を選択していることが示唆された.この結果をもとに,本種がどのように人工林での生息に適応しているかを考察する.


日本生態学会