| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-024  (Poster presentation)

アサリ漁場のマクロベントスの群集組成予測における線虫サイズ組成の有効性
Utility of nematode size fractions on estimating macrobenthic assemblage of Ruditapes fishery grounds

*高田宜武, 辻野睦, 手塚尚明, 内田基晴(水産研究・教育機構)
*Yoshitake TAKADA, Mutsumi TSUJINO, Naoaki TEZUKA, Motoharu UCHIDA(Fish. Res. Edu. Agen.)

九州から北海道にかけて多くの干潟はアサリ漁場となっている。近年アサリの生産量は各地で減少傾向にあるが、その要因と付随する現象について全国的な傾向への理解は進んでいない。干潟に生息する底生生物のうち、アサリを含む1mm以上のサイズのものをマクロベントス、0.063−1mmのものをメイオベントスと呼ぶ。アサリも他の底生生物と同様に環境要因の影響を受け、また相互に影響しあっている。線虫はメイオベントスを代表する分類群であり、短寿命等の生活史の特徴から環境要因に敏感に反応すると考えられている。そこで本研究では、日本国内の12の干潟の34地点において調査を2013年から2017年にかけて行い、マクロベントスの群集組成の比較を行った。説明変数として底質環境と線虫密度の組み合わせを変えて多変量解析(dbRDA)を行い、群集組成の予測の程度を複数のモデル間で比較した。環境変数としては、底質中の有機炭素量、全窒素量、クロロフィル量、強熱減量、中央粒径値、泥分含量、酸化還元電位、環境水塩分濃度を用いた。群集組成は類似度をもとに4つのクラスターに分類することができた。うち1つのクラスターはアサリが指標種となり、主に東日本に分布した。dbRDAモデルでは、底質環境による群集組成の説明が有意に可能であり、説明変数に線虫密度を加えるとより良いモデルが得られた。さらに、線虫をサイズによって大中小に分割して密度を求め、変数として用いたところ、大中サイズ(≥ 0.125 mm)の線虫を合わせて説明変数に追加したものが最良のモデルとなった。モデルの結果から、大中サイズの線虫密度が高いほどアサリを指標種とする群集が成立しやすく、低くなるとシオフキ等を指標種とする群集が成立すると予測された。線虫密度は上記の環境変数では表されない干潟環境の特徴をとらえているものと思われる。


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