| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-039  (Poster presentation)

日本列島におけるテンナンショウ属の適応放散に送粉者相の転換が果たした役割 【B】
Role of pollinator shifts in adaptive radiation of Arisaema in the Japanese Archipelago 【B】

*柿嶋聡(国立科学博物館), 松本哲也(岡山大学), 大野順一(静岡県), 星山耕一(静岡県), 大西憲太郎(愛媛県), 早瀬裕也(富山県中央植物園), 末次健司(神戸大学), 伊東拓朗(東北大学), 常木静河(愛知教育大学), 永野惇(龍谷大学), 小林禧樹(兵庫県植物誌研究会), 芹沢俊介(愛知みどりの会), 邑田仁(東京大学), 奥山雄大(国立科学博物館, 東京大学)
*Satoshi KAKISHIMA(Natl. Mus. Nat. Sci.), Tetsuya MATSUMOTO(Okayama Univ.), Junichi OHNO(Shizuoka Pref.), Koichi HOSHIYAMA(Shizuoka Pref.), Kentaro OHNISHI(Ehime Pref.), Yuya HAYASE(Botanic Gardens of Toyama), Kenji SUETSUGU(Kobe Univ.), Takuro ITO(Tohoku Univ.), Shizuka TSUNEKI(Aichi Univ. of Education), Atsushi J. NAGANO(Ryukoku Univ.), Tomiki KOBAYASHI(Society for Flora of Hyogo), Shunsuke SERIZAWA(Aichi Green Association), Jin MURATA(Univ. of Tokyo), Yudai OKUYAMA(Natl. Mus. Nat. Sci., Univ. of Tokyo)

日本に分布するサトイモ科テンナンショウ属は53種のうち48種がマムシグサ節に分類され、そのうち44種が固有種である。そのため、マムシグサ節は日本列島で適応放散的に急速な種分化を遂げた系統群だと考えられる。しかし、遺伝的に近い多数の種が含まれていると考えられるため、これまでの分子系統解析では十分な解像度が得られず、分類はいまだに混乱している。また、テンナンショウ属の近縁種間では、交配前隔離の一つである送粉者相の違いが生殖隔離機構として重要である可能性が指摘されてきたが、多くの種の送粉者相は未知で、ほとんど検証は進んでいない。そこで、本研究ではMIG-seqおよびRAD-seqを用いたゲノムワイドSNPデータに基づく分子系統解析を行うとともに、網羅的な送粉者相の解明を行い、テンナンショウ属の適応放散的な多様化に送粉者相の転換が果たした役割を検討した。その結果、先行研究から推定されていたグループの単系統性が概ね支持されるとともに、新たに広義のマムシグサ群内に6つのクレードが認識された。さらに、多系統になる種が多く見つかったため、今後分類学的な再検討が必要である。送粉者相の網羅的な調査の結果、各クレード内で異なる送粉者タイプの種が見られた一方で、異なるクレードに似たような送粉者タイプの種が見られた。そのため、それぞれのグループで平行的に送粉者相の転換が生じていると考えられ、それがマムシグサ節の多様化に大きく貢献している可能性が示唆された。


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