| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-041  (Poster presentation)

名古屋市の都市孤立林におけるゼニバサイシンの訪花昆虫相
Flower visitors to the Asarum takaoi var. hisauchii in the urban woods of Nagoya City, Central Japan

*橋本啓史(名城大学), 長谷川泰洋(名古屋産業大学)
*Hiroshi HASHIMOTO(Meijo Univ.), Yasuhiro HASEGAAWA(Nagoya Sangyo Univ.)

ゼニバサイシン Asarum takaoi var. hisauchii はウマノスズクサ科カンアオイ属ヒメカンアオイの変種で、ヒメカンアオイの中でも小型で、東海地方に多く分布する。カンアオイ属植物は移動性の低いアリ散布植物として知られるが、花粉媒介者については十分に明らかになっていない。ヒメカンアオイの花粉媒介者については、日浦(1978)が地表徘徊性動物の可能性を、藤田・藤山(2004)がトビムシを、根路銘・岡崎(2013)がハエ目の飛翔性昆虫を中心に計11種の訪花を報告している。また、根路銘・岡崎(2013)はヒメカンアオイは自動自家受粉では結実が見られなかったが、人工自家授粉では結実が見られ自家和合性であることを報告している。名古屋市の東部丘陵地のかつての里山林は、市街化の進展により、現在は孤立林となって点在している。それらの孤立林にゼニバサイシンとヒメカンアオイはまだ広く分布しているが、個体群の存続には花粉媒介者の存在が不可欠と言える。そこで、名古屋市の都市孤立林のまずは1か所でゼニバサイシンの花のタイムラプス撮影を行い、訪花昆虫相を調べた。調査は2020年3月24日から4月11日の期間で、5分間隔(一部10分間隔)で断続的に計180時間12分間撮影し、2048枚の写真を撮影した。どの時間帯も4日間以上は撮影されている。撮影にはコンパクトデジタルカメラ Tough TG-5(オリンパス社製)を用い、外部電源として小型ポータブル電源Sherpa 50 Recharger V2(GOAL ZERO社製)を用いた。撮影された訪花昆虫(とクモ類)は夜間のものが中心で、ツヤツチゾウムシ、コウチュウ目不明種、ガガンボダマシ科?不明種、ハチ目不明種、アリ不明種、ニクバエ科不明種、カメムシ目?不明種、カマドウマ?、ケラ?、クモ不明種で、訪花頻度が高かったのはハチ目昆虫であった。


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