| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-066  (Poster presentation)

ヒメボタル成虫集団の発光活動の定量観測:同時二点観測と同一地点日日観測
Quantitative observation of fireflies Luciola parvula : two site observations and daily variations

*小西哲郎(中部大学)
*Tetsuro KONISHI(Chubu Univ.)

ヒメボタル(Luciola parvula)成虫の発光活動を、野外の生息地にて定量的に観察した結果を報告する。

ヒメボタルは日本の本州以南に生息するホタル科の昆虫である。この種は幼虫時代を含め、一生を陸上で過ごす。成虫はメスオスともに夜間に発光し、互いの光を認識することで繁殖活動を行う。

これまでの他の観察者による目視観察結果により、ヒメボタル成虫の発光活動には、発光している個体数が一晩の間に数十分程度の時間で大きく変動すること、日によって発光時間帯や発光個体数に変化があることなどが伝えられている。これらは現地で観察すると確かにそのように感じられるが、目視観察は観察時間が限られている事、結果を他の観察と比較しにくい事などの限界があった。

我々は、デジタルカメラによる静止画連続撮影と画像処理により、発光しているヒメボタルの個体数変動を定量的に観察し、その時系列データを取得する方法を開発した。この写真計測の方法と、従来の目視観察を同時に実施することで、両者が本質的によく一致していることを確認することが出来た。発光生物に対するこうした定量的観察の方法は我々の知る限り他に例を見ないものである。

発光個体数の時間変動要因はいまのところ不明であるが、考えられる候補としては、外部環境(気温、背景の明るさなど)、個体間相関が考えられる。同一夜に少し離れた場所で写真計測を行うことで、外部環境要因の影響を見ることが出来る。また、同一箇所で複数夜にわたって写真計測を行うと、発光の時間変化プロファイルが日々異なることもわかる。発表ではこれらについて詳しく述べたい。


日本生態学会