| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-068  (Poster presentation)

どこに集まるか:フェロモンによって制御されるシロアリの集合行動
Where do termites gather together?: Pheromones regulate aggregation behaviors

*三高雄希, 秋野順治(京都工芸繊維大学)
*Yuki MITAKA, Toshiharu AKINO(Kyoto Institute of Technology)

シロアリは化学物質を介したコミュニケーションを高度に発達させており、様々な社会行動の制御にフェロモンが関与していると古くから考えられてきた。地下性シロアリの多くは、ワーカーが餌となる木材を求めて巣の周辺を探索し、適した木材を発見すると巣仲間を動員し、時間をかけて新たな木材を開拓し始める。このとき、ワーカーは巣仲間を同じ場所に長時間留める集合フェロモンを分泌していると予想されるが、そのようなフェロモンの存在は今まで想定すらされておらず、実証もされてこなかった。本研究で我々は、ヤマトシロアリのワーカーが分泌している集合フェロモンの成分を同定し、このフェロモンがワーカーを誘引し、その発生源に長時間拘束させる効果を持つ事を実証した。ガスクロマトグラフ質量分析計によってワーカー抽出液の成分分析を行い、候補物質を様々な組み合わせでワーカーに提示する生物試験を行なった結果、本種の集合フェロモンは体表炭化水素の主要成分2種と芳香属化合物1種、脂肪酸2種、コレステロールの混合物から成ることが明らかとなり、これら計6種の成分が相乗作用でワーカーに誘引・拘束効果を示すことが判明した。本研究から、ヤマトシロアリのワーカーはもともと種認識・巣仲間認識に用いていた体表炭化水素に、複数の化合物を文脈依存的に組み合わせることで集合フェロモンとしての機能を付加していることが強く示唆された。


日本生態学会