| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-079  (Poster presentation)

繁殖干渉が集団の遺伝構造や自殖率に与える影響:在来ツユクサ属草本を用いて 【B】
Effects of reproductive interference from closely related species on genetic structure and selfing rate in native Commelina species. 【B】

*勝原光希(岡山大学), 宮崎祐子(岡山大学), 丑丸敦史(神戸大学)
*Koki KATSUHARA(Okayama Univ.), Yuko MIYAZAKI(Okayama Univ.), Atushi USHIMARU(Kobe Univ.)

繁殖干渉は、繁殖過程で適応度を低下させる種間相互作用であり、特に近縁種間で強い悪影響を及ぼすことが知られている。その帰結として、競争排除による時空間的な棲み分けを促進したり、繁殖干渉を回避するための形質置換を促進したりするなど、生態学的プロセス・進化学的プロセスの両方で重要な役割をはたしうる。開花植物においては、送粉者を介した種間送粉が引き起こす繁殖干渉が、近縁植物種の時空間的な棲み分けを駆動する主要因となることが、いくつかの研究で報告されてきた。
一方で近年、同所的に開花する植物種において、自動自家受粉(特に、送粉者による異種花粉送粉の前に行われる先行自家受粉)による自殖が繁殖干渉の悪影響を軽減しうることが報告されている。発表者らは、同所的に生育するツユクサ科ツユクサ属の一年生草本ツユクサとケツユクサにおいて、送粉者による異種間送粉によって結実率が低下する繁殖干渉が存在する一方で、先行自家受粉によってその悪影響が軽減されることを発見してきた。
このように、結実率の低下がもたらす個体群サイズの縮小や、自家受粉に依存した繁殖による自殖率の増加は、集団の遺伝構造を変化させることが期待される。しかし、繁殖干渉が集団遺伝学的プロセスに繁殖干渉が与える影響について着目した研究例はほとんどない。集団の遺伝構造の変化は、生態学的・進化学的な動態を考える上でも重要な役割を果たす。本発表では、マイクロサテライトマーカーを用いてケツユクサの集団遺伝学的なパラメータ(遺伝的多様性・有効集団サイズ・近交係数及び自殖率)を推定し、ケツユクサが単独で生育する集団とツユクサと同所的に共存する集団を比較することで、繁殖干渉がケツユクサ集団の遺伝構造に与える影響について調査を行った。


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