| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-139  (Poster presentation)

白神山地のブナ林に形成された小規模湖沼とその植生について
The vegetation of small ponds in the beech forests of Shirakami Mountains.

*山岸洋貴(弘前大学 農生 白神)
*Hiroki YAMAGISHI(Hirosaki Univ.)

止水域の分布が限られる山地では、主に火山地形や雪田、地滑りなどに起因する凹地に小規模湖沼(以降、沼)が形成され、これらは水辺を利用する生物にとって欠かせない重要な存在である。しかし、その形成過程や特性、周辺環境により利用する生物相は異なり、山地の生態系における役割も異なると推測される。しかし、この点について着目した研究はほとんどない。本研究の舞台である白神山地は、隆起速度が年間1.3㎜と速いため低山ながらも険しく、さらに地質が脆いため、地滑り地形が至る所に存在する。地図上では、この地滑り地形と推測される場所に複数の沼の標記がみられるが、これらの沼が実際に存在するのかを含めて、その多くは実態が不明である。そこで本研究は、沼の分布やそれぞれの形成過程などを明らかにし、植物をはじめとした生物相調査を行うことで、人為的な影響が比較的少ないブナ林生態系が広がる白神山地において、沼が生物多様性の創出にどれほど寄与するのかを明らかにすることを目的として行っている。調査対象地域は、ブナ林が分布する標高200m以上の山地(総面積約1680㎞2)とした。まず、沼を含む止水域について全体像を把握する為に地形データ、航空写真、文献等を利用し可能な限り、その分布とおおよその面積を記録した。その結果、対象地域には湖沼は70か所存在し、そのうち、人為的影響が少ないと考えられる止水域は20か所で、すべて1ha以下の小さな沼もしくは沼群であった。2020年にはブナ帯に存在する5か所(うち3か所は同じ地滑り移動体に位置する)を踏査し、沼および周囲の植物相、水深などの沼環境について調査した。これまでのところ、止水域を主な生育地とする沈水・浮遊・抽水植物が観察されたが、同時期に形成されたと推測される3つ沼では近傍に位置するにも関わらず、種組成が大きく異なることなどが明らかになった。


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